近藤伸二のアジア新潮流

覇権に陰り?巨人インテルのトップ「新たな戦略」とは

近藤伸二・ジャーナリスト
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オハイオ州での工場建設を発表するインテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)=2022年1月21日(同社提供)
オハイオ州での工場建設を発表するインテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)=2022年1月21日(同社提供)

半導体「三国志」(1)

 経済成長のカギを握る半導体。その半導体を製造する世界のビッグスリーは米インテル、韓国のサムスン電子、そして台湾積体電路製造(TSMC)だ。3社はそれぞれの政府を巻き込んでときには激しく対立し、ときには手を握る。米・韓・台湾の巨大3メーカーが繰り広げる新シリーズ「半導体三国志」をお届けする。最初に焦点を当てるのは「インテル入ってる」の広告で知られるインテルだ。

ビッグスリーが米国で大型工場

 半導体業界の巨人、インテルが1月下旬、200億ドル(約2兆3000億円)を投じてオハイオ州に最新鋭工場を建設すると発表した。半導体ビッグスリーの他の2強であるTSMCはアリゾナ州、サムスン電子はテキサス州に大型工場を造る計画を既に公表している。各工場は2024年から25年にかけて相次いで稼働する予定で、これから米国を舞台に激しい競争が繰り広げられる。

 インテルは、半導体の集積率は18カ月で2倍になるという「ムーアの法則」を唱えたことで知られるゴードン・ムーア氏らが1968年に設立し、高い技術力で業界の先頭を走ってきた。

 同社の中央演算処理装置(CPU)は多くのパソコンに組み込まれてきた。起動すれば「インテル・インサイド(入ってる)」のロゴが画面に現れるなど、圧倒的な存在感で世界を席巻した。米マイクロソフトのOS(基本ソフト)ウィンドウズとともにパソコンの標準規格となり、「ウィンテルの覇権」と称された。

インテルの最先端技術に影

 そんなインテルが15年ごろから、半導体の性能の鍵を握る回路線幅の微細化競争で、TSMCやサムスンに後れを取るようになった。TSMCは20年春に回路線幅5ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体を初めて量産化し、サムスンも同年後半に並んだ。インテルは1世代前の7ナノの量産にも手間取っており、2世代の差がついている。

 そうした苦境を反映して、長らく拮抗(きっこう)していたインテルとTSMCの株式時価総額は20年半ばごろから大きく開き始め、TSMCが5000億ドル(57兆5000億円)から6000億ドル台で推移するのに対し、インテルは2000億ドル前後で低迷を続けている。得意のCPUでも、米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)に急速にシェアを奪われている。

 そこで、21年2月に最高経営責任者(CEO)に抜てきされたのが、最高技術責任者(CTO)も務めたパット・ゲルシンガー氏だ。半導体受託生産会社(ファウンドリー)のTSMCと違って、インテルは設計から製造まで一貫して行う垂直統合型メーカーだ。だが、ゲルシンガー氏は就任翌月、垂直統合型を進化させたビジネスモデルに移行するとして、他社への製造委託を増やす一方で、ファウンドリー事業にも乗り出すと宣言した。

ビッグスリーが客を奪い合う関係に

 この方針に従い、インテルは最先端の3ナノ品をTSMCに製造委託したとみられている。ゲルシンガー氏は21年12月中旬、台湾を訪問し、TSMCの劉徳…

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近藤伸二

ジャーナリスト

 1956年神戸市生まれ。79年毎日新聞社入社。香港支局長、台北支局長、大阪経済部長、論説副委員長などを歴任。2014年追手門学院大学教授。22年3月に退職し、その後、ジャーナリストとして活動。著書に「彭明敏 蔣介石と闘った台湾人」「アジア実力派企業のカリスマ創業者」など。