近藤伸二のアジア新潮流

「インテルvsTSMC」激しく対立する半導体の2巨頭

近藤伸二・ジャーナリスト
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オハイオ州での工場建設を発表するインテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO=右)。左はオハイオ州知事=2022年1月21日(同社提供)
オハイオ州での工場建設を発表するインテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO=右)。左はオハイオ州知事=2022年1月21日(同社提供)

半導体「三国志」(2)

 米半導体大手インテルが新しい最高経営責任者(CEO)パット・ゲルシンガー氏のリーダーシップの下、半導体受託生産(ファウンドリー)事業に乗り出した。この結果、この分野で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)と正面からぶつかり合うことになった。

 インテルは30年間、世界の半導体業界のトップを走ってきた。一方、TSMCはファウンドリーという業態を創り急成長した新興勢力だ。巨人インテルのトップ、ゲルシンガー氏と新興のTSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏が激しい非難合戦を繰り広げるという異様な展開が続いている。

 口火を切ったのは張氏だ。2021年4月に台北市内で行った講演で、「TSMCを立ち上げる際、インテルに出資を求めたが断られた。彼らは我々を見下していた。インテルはファウンドリーがこれほど重要なビジネスモデルになるとは思っていなかっただろう。そこに自ら参入することになるとは、皮肉なものだ」と当てこすった(台湾「中央通信」21年4月21日)。

インテルに出資を断られた“遺恨”

 発言の背景には、1987年のTSMC創業時の経緯がある。同社は台湾政府傘下の工業技術研究院の半導体プロジェクトを民間移転する形で設立された。研究院の院長を務めていた張氏がTSMC会長を兼務することになった。

 台湾政府は世界初のファウンドリー専業メーカーとなるTSMCの発足に当たり、海外の信用を高めるため、外国の有力企業からも出資を得るよう張氏に指示した。張氏はインテルにも声を掛けたが、インテルは応じなかった。結局、オランダ電機大手フィリップスが資本金の27・5%を出資した。

 インテルが出資を見送ったのは、ファウンドリー専業は大きく成長するビジネスモデルではないと判断したからだった。張氏の胸中には、インテルの当時の冷淡な対応への恨みや、今ではインテルを超えたという高揚感が渦巻いていただろう。

インテル側も反撃

 ゲルシンガー氏も黙っていない。米政府がTSMCのアリゾナ工場建設に巨額の補助金を予定していることに対し、21年6月に米政治専門サイト「ポリティコ」に寄稿文が掲載された。そのなかで、TSMCはアリゾナの新工場に最先端技術は導入しないだろうと指摘し、外国企業のTSMCに米国の税金である補助金を交付すべきではないと訴えた。

 米バイデン政権は半導体を国家安全保障上の戦略物資と認識し、半導体の生産や研究開発に総計520億ドル(約6兆円)を投じる政策を進めている。TSMCは「…

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近藤伸二

ジャーナリスト

 1956年神戸市生まれ。79年毎日新聞社入社。香港支局長、台北支局長、大阪経済部長、論説副委員長などを歴任。2014年追手門学院大学教授。22年3月に退職し、その後、ジャーナリストとして活動。著書に「彭明敏 蔣介石と闘った台湾人」「アジア実力派企業のカリスマ創業者」など。