
「ポンっ! きゅっ! ふわ~!」。女優の賀来千香子さんが登場する女性の髪の毛のボリュームをアップさせるウイッグの新コマーシャルが今年になって流れている。賀来さんで私が思い出すのは、一世を風靡(ふうび)した光文社の女性ファッション誌「JJ」。
そのJJが2021年2月号で事実上の休刊となったのは結構衝撃だった。1975年4月創刊のJJは女子大学生らの心をつかみ、読まずんば「女子大学生」にあらずの空気もあった。
事実上の休刊から1年。私が大学入学後、欠かさず読んでいた80年代前半のJJを大宅壮一文庫で改めて見た。文字が小さくてつらいが、フェリス女学院短大、慶応大学、南山大学、西南学院大学など、お嬢様が通うとされる東西の大学の女性が登場する。
同じ髪形でハマトラ(横浜発祥のトラディショナルファッション)の着こなしを披露するページをくっていると、毎月買って華やかな世界を楽しんでいたころに戻った。私は「JJ世代」と言われれば否定できない。当時、表紙を飾る人気モデルだった賀来さんが出演するウイッグのCMを見ると、昔も今も同世代の女性と並走し、励ましてくれるようで感慨深いのだ。
「高級ブランドは買わなくていい」
光文社が20年10月、JJの不定期刊行とウェブサイトへの移行(つまり休刊)を発表した後の反響は大きかった。「サンデー毎日」が仮に休刊となっても、こんなではないなと思ったくらいだ。
休刊の理由は部数減・広告減だろうが背景は? 書評家の永江朗さんは「この20年、読者の環境は激変した。ファストファッションが定着し、情報の入手先もネットが中心になった。(略)時代の変化についていけないアパレル企業は退場を余儀なくされる。ファッション誌もその例外ではない」と分析した(週刊エコノミスト20年12月1日号「出版業界事情」)。
高級ブランドなんか買えないし、買わなくてもいい、「これユニクロ」とはばかることなく…
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山田道子
元サンデー毎日編集長
1961年東京都生まれ。85年毎日新聞社入社。社会部、政治部、川崎支局長などを経て、2008年に総合週刊誌では日本で最も歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長、紙面審査委員。19年9月退社。