
3月12日にJR各社をはじめ、多くの鉄道会社がダイヤ改正を予定している。だがコロナ禍の影響で列車本数の削減が目立ち、明るい話題は乏しい。その中で大きなニュースとなったのが、小田急電鉄・特急ロマンスカーの車両として親しまれた「VSE」(50000形)が定期運用から消えることだ。今後はイベント列車などに使用されるが、それも約1年半後の2023年秋ごろには終了する予定となっている。
18年半ほどで引退
白塗りの車体が特徴のVSEのデビューは、05年3月19日。わずか18年半ほどで引退ということになる。鉄道車両の一般的な使用期間は30~50年と言われるが、もともと特急型車両は最高運転速度が速く、毎日の走行距離も長いため寿命は短めだ。
だが、それでも20年も使っていない車両が消えるのは少し早いと感じる。小田急には1996年にデビューしたロマンスカー「EXE」(30000形)が在籍し、リニューアルを受けて特に引退のうわさもなく運転を続けている。
では、VSEが消える理由は何か。それは「異端車」であるからだ。仕様が大きく異なる少数派の車両は、メンテナンス面でも運転面でも扱いづらい。
特急列車の本数削減が引き金
新型コロナウイルス感染症の流行は小田急の観光客輸送にも打撃を与え、その主役である特急ロマンスカーの利用客も大幅に減少した。そのため今回のダイヤ改正でも、新宿―箱根湯本間を走る特急「はこね」「スーパーはこね」は平日が上下45本から30本に削減。土曜・休日も51本から39本に減る。当然、必要となる車両数も減ることになり、使い道のない車両はリストラの対象だ。
ではどの車両を減らすのかとなると、特殊仕様のVSE…
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土屋武之
鉄道ライター
1965年、大阪府豊中市生まれ。大阪大学で演劇学を専攻し、劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。出版社勤務を経て97年に独立し、ライターに。2004年頃から鉄道を専門とし、雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事などを担当した。東日本大震災で被災した鉄道路線の取材を精力的に行うほか、現在もさまざまな媒体に寄稿している。主な著書に「ここがすごい!東京メトロ」(交通新聞社)、「きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)など。