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ディズニーオタクにも?「マウントと同担拒否」の闇

廣瀬涼・ニッセイ基礎研究所・生活研究部研究員
東京ディズニーランド=千葉県浦安市で2020年2月29日、本社ヘリから玉城達郎撮影
東京ディズニーランド=千葉県浦安市で2020年2月29日、本社ヘリから玉城達郎撮影

 「オタク」のイメージはここ30年で大きく変わり、ポジティブな意味合いで受け止められることも多くなってきました。

 しかし、現代のオタクの世界にもドロドロとした「負の側面」は当然あります。それは前回の記事で取り上げたディズニーオタク(通称・Dオタ)も例外ではありません。「夢と魔法の王国」のオタクたちだからといって、特別ということはないのです。今回もDオタである筆者が、ディープな世界の一端を紹介します。

マウンティングをする人々

 まずディズニーオタクの世界にも「マウンティング」が存在します。

 マウンティングとは、「私はあなたより上」といった優位性を示すために行われる言動や振る舞いのこと。学歴マウントや収入マウントといったさまざまな形があり、職場の人間関係からママ友仲間に至るまで、日本社会のいろいろなところで見られるものです。

 オタクの世界にも特有のものがあり、ディズニーオタクによく見られるのは「オタク歴」のマウンティングですね。

 ディズニーはもうじき100周年を迎える歴史あるコンテンツであり、東京ディズニーランドも開業40周年を控えています。そうなると、いかに自分が昔からディズニーを楽しんでいたかを公言することが、一種のステータスにもなってきます。

 「あのパレード、面白かったよね」と、10年くらい前のことで知らない人も多いのを分かっていながら話し始めたり、20年前に買ったグッズの袋が出てきちゃいました、と写真をアップしたり、SNSでもオタク歴の長さをほのめかすタイプの表現はたびたび見られます。

そのつもりはなくても…

 ただ、発言者にその気はないのに、聞いている側が「マウンティングされた」と受け取ることで、結果的にいざこざに巻き込まれてしまうケースもあります。

 例えば「今月はアメリカのディズニーランドに行った後、上海や香港にも寄ってきます」という書き込みがあったとします。この場合、書き込んだ人にマウンティングをする意図などないかもしれません。しかしここからさらに「マウンティング返し」のような状況に発展することがあります。

 書き込んだ人に対して「そのホテルを使うならそこまでお金はかかってないよね」などと突っ込むわけですが、そこから自分はもっとお金を掛けているというアピールにつなげ、唐突に消費金額のマウンティングが始まったりするのです。

 このほか、「そんなことも知らないの…

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ニッセイ基礎研究所・生活研究部研究員

 1989年生まれ、静岡県出身。2019年、大学院博士課程在学中にニッセイ基礎研究所に研究員として入社。専門は現代消費文化論。「オタクの消費」を主なテーマとし、10年以上、彼らの消費欲求の源泉を研究。若者(Z世代)の消費文化についても講演や各種メディアで発表を行っている。NHK「BS1スペシャル-『“Z世代”と“コロナ”』」、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」、TBS「マツコの知らない世界」などで製作協力。本人は生粋のディズニーオタク。