
ロシア軍によるウクライナ侵攻で、民間人に多数の死傷者が出ていると発表されている。ポーランドをはじめとする東欧のウクライナ隣接国は避難民を受け入れており、避難民の国外への動きは当分収まらないだろう。実はウクライナは1990年代以降、人口が大きく減少してきた。今回は、同国の人口減少に関するデータを見ていく。
世界で最も人口減少の激しい国の一つ
まず、ウクライナの近年の人口推移をおさえる。同国は、91年にソビエト連邦(ソ連)の崩壊で独立国となった。国連の統計(World Population Prospects 2019)によると、独立時の人口は約5146万人だったが、2020年には約4373万人に減少している。
人口の年平均増減率は90~00年にマイナス0.5%、00~10年にマイナス0.6%、10~20年にマイナス0.5%で推移し、世界で最も人口減少の激しい国の一つとなっている。
背景には、移民となって国外に人口が流出している問題もあるが、基本的には低い出生率と高い死亡率による自然減が強く影響している。
国連や世界銀行などの分析によると、飲酒、喫煙、肥満、高血圧、エイズのまん延などが高い死亡率の原因とされている。
平均寿命と健康寿命が短い
世界保健機関(WHO)の統計(Global Health Observatory data)をもとにヨーロッパの平均寿命(19年)について見てみる。ウクライナは男性が68.0歳、女性が77.8歳だ。男性は、ヨーロッパでトルクメニスタンとタジ…
この記事は有料記事です。
残り866文字(全文1512文字)
篠原拓也
ニッセイ基礎研究所主席研究員
1969年、東京都生まれ。早稲田大理工卒。92年、日本生命入社。2014年から現職。保険事業の経営やリスク管理の研究、保険商品の収益性やリスクの評価、社会保障制度の調査などを行う。公益社団法人日本アクチュアリー会正会員。著書に「できる人は統計思考で判断する」(三笠書房)がある。