
外国為替市場で円安・ドル高が急激に進んでいる。ロシアのウクライナ侵攻が続く3月16日、ニューヨーク市場で1ドル=119円台まで円が値下がりし、2016年2月以来約6年1カ月ぶりの円安水準をつけた。日米の金利差を背景に下げ足を速める「円」。この展開はどこまで続くのか。
相場を見通すうえで心配なのは、日本の経常赤字が膨らんできたことだ。経常赤字と円安は密接な関係がある。ウクライナ情勢を反映して、原油高が進んで経常赤字が膨らみ、支払いのためのドル需要が高まって一段と円安に動きやすい環境になっている。
侵攻後に一段と原油高
「原油高→経常赤字の増加→円安」という構図はガソリン価格の上昇だけでなく、他の輸入品の値上がりにもつながる。いわば「悪いスパイラル」と言える。しかも、直近に公表された経常赤字額は、2カ月前のものだ。
財務省が3月8日に発表した1月の経常収支(速報値)は、1兆1887億円の赤字で2カ月連続の赤字となった。赤字額は14年1月の1兆4561億円に次ぐ過去2番目の水準だった。ただし、これはロシアがウクライナに侵攻する前の数値だ。
ウクライナ侵攻が始まった2月下旬以降、エネルギー関連の価格は一段と上昇している。「原油高→経常赤字の増加→円安」がこの先も拡大するとの見方が十分に成り立つ。
第1次石油危機の再現?
大手銀行のマーケット担当者は「1973年に起きた第1次石油危機時の事態を再現しかねない」と懸念を口にする。第1次石油危機は、第4次中東戦争と石油輸出国機構(OPEC…
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浪川攻
金融ジャーナリスト
1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。