職場のトラブルどう防ぐ?

人事課長が見た「スムーズな退職と困った退職」の違い

井寄奈美・特定社会保険労務士
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 A美さん(39)は従業員数約800人のある販売会社の人事課長で、従業員の入退職に関する手続きを担当しています。従業員の退職にはさまざまなケースがあり、なかには職場とのあつれきを生むこともあります。

一方的な退職通知

 A美さんの会社は毎年、年度末になると、転職のために退職する正社員や、契約期間満了で職場を去る契約社員など、一定数の退職者がいます。従業員の退職届は通常、所属長経由で人事部に提出されます。

 これまでに一番困ったのは、突然出社しなくなった若手従業員が「退職します。残っている年次有給休暇を消化した後に退職の手続きをしてください。健康保険証などは郵送で返却します」と一方的に上司へメールを送ってきたことです。

 上司は「会社に呼び出す方法はないのか。最低限の引き継ぎをしてもらわないと困る」とカンカンに怒りました。A美さんが対応することになり、この従業員に出社を求めましたが、「次の職場で働き始めているので無理です」と拒否されました。

 同社の就業規則には「自己都合退職の場合は、1カ月前までに申し出る」というルールがあります。この従業員が連絡をしてきたときは、退職まで1カ月を切っていました。

 しかし、有休取得の申し出がある限り、それを認めずに無理に出勤してもらうことはできません。会社には、従業員が有休を希望する日を別の日にずらすよう命じる時季変更権がありますが、退職日が決まっている場合には時季の変更を命じることもできません。

 この部署では人員の補充がすぐにはできず、部署内で退職者の業務を振り分けたため、しばらくの間は残業が増える結果となりました。

スムーズな退職の仕方は

 最もス…

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井寄奈美

特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/