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ウクライナ侵攻 ハイブリッド戦争の先の「通貨戦争」

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
主要7カ国(G7)など各国はロシアに厳しい経済制裁を科している(バイデン米大統領)=2022年3月21日、AP
主要7カ国(G7)など各国はロシアに厳しい経済制裁を科している(バイデン米大統領)=2022年3月21日、AP

 経済学者のケインズは、かつて帝政ロシアを倒したレーニンは「資本主義を破滅させる最上の方法は、通貨を堕落させることだ」と言った、としている。

 今、その通貨を堕落させる包囲網が現代ロシアを苦しめている。「通貨を堕落させる」とは、ルーブルの価値を下落させて、輸入物価を急上昇させることだ。

ルーブルは一時40%下落

 主要7カ国(G7)など各国は、2月24日にウクライナに軍事侵攻したロシアに対し、強烈な経済制裁を科した。特に、国際銀行間通信協会(SWIFT)から、ロシアの主要銀行7行を排除して、ドルを仲介した資金決済をできなくしたことは効いた。資金決済ができなければ、貿易取引もできなくなる。

 G7は、それに追撃を加えるように、ロシア中央銀行の保有するドル・ユーロ・ポンド・円の資金凍結に動いた。ドルを動かせなくなったロシアは、ドル建てのロシア国債がデフォルト(債務不履行)するリスクに直面している。3月16日のドル建てロシア国債の利払いは何とか履行したが、まだ利払いは続くので、きわどい展開になるとみられている。

 この制裁は、ルーブルを保有している人の利便性を著しく悪化させるため、ルーブルの対外価…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。