
ロシアとウクライナの停戦協議の場に、ロシアの新興財閥「オリガルヒ」の一人、ロマン・アブラモビッチ氏が参加していることが明らかになりました。同氏は英サッカーチーム「チェルシー」のオーナーとして知られます。仲介役なのでしょうか、それとも? 元毎日新聞モスクワ支局長で2度にわたり特派員としてロシアで取材にあたった大木俊治・記事審査委員に、オリガルヒの実態も含めて聞きます。
――アブラモビッチ氏はなぜ停戦協議の場に?
◆何らかの役割を持って停戦協議に参加していることは間違いないようです。通信社の報道によると、ロシアの大統領報道官が「公式な交渉メンバーではないが、双方の代表団が参加を認めている」と認めました。国営通信社のタス通信も、同氏がトルコのイスタンブールでの停戦交渉に参加していると報じています。
ただし、目的や背景は明らかになっていません。侵攻で経済制裁を受け、生き残りをかけて動いているのかもしれません。でも、よくわからない部分が多いです。
――唐突な動きですね。
◆ウクライナの大統領が、同氏への制裁保留をバイデン米大統領に電話協議で要請したとの話を米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じました。この件に対し米当局者はほぼ「ノーコメント」のようです。
また、同紙は、アブラモビッチ氏に、有毒物質による攻撃を受けたと疑われる症状が出たと報じていますが、ロシアの大統領報道官は「情報戦だ」と否定しています。未確認情報が多いです。
英サッカーの強豪チェルシーのオーナー
――アブラモビッチ氏はどういう人物ですか。
◆オリガルヒの中で最も有名な一人です。エリツィン政権の時代から石油企業に関わっていましたが、プーチン政権にうまく取り入って成り上がった実業家で、「石油王」と呼ばれています。
欧米各国は侵攻後、オリガルヒの資産凍結を決めました。アブラモビッチ氏も対象です。同氏は、英プレミアリー…
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今沢真
経済プレミア編集長
1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀・財研キャップ、副部長を経て論説委員(財政担当)。15年経済プレミア創刊編集長。19年から同編集部。22年4月に再び編集長に。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」など。16~18年度城西大非常勤講師。