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元特派員が見た「プーチン皇帝」失政は臣下の責任に

今沢真・経済プレミア編集部
ロシアのプーチン大統領=2022年3月30日、AP
ロシアのプーチン大統領=2022年3月30日、AP

 プーチン政権の約20年で、ロシア経済はエネルギーを中心に上向きました。ところが経済が回復するにつれ、情報統制など強権を次々に発動していきました。元毎日新聞モスクワ支局長の大木俊治さんに、プーチン政権下の経済政策とロシア国民に支持された背景を聞きます。

 ――プーチン政権でロシア経済は上向いたのですか。

 ◆1991年にソ連が崩壊した後に10年ほど続いたエリツィン政権では、経済の大混乱が続き、一部の富豪オリガルヒが栄えて国民は困窮していました。2000年にプーチン大統領が誕生したときは「だれ?」というのが国民の反応でした。

 プーチン政権は石油産業を国の支配下に取り戻し、天然ガスを含めてエネルギー産業の権益を握ったのです。うまい具合に石油価格が上がり、ロシアの経済成長率も上がりました。「混乱した経済を安定させた」とプーチン人気も上がりました。

「皇帝と臣下」の構図

 ――改革が成功したと。

 ◆それと引き換えに、エリツィン政権で引き立てられた民主派の人たちを排除し、オリガルヒにも手をつけて、言うことをきかない者を処分しました。強権発動ですね。マスコミの統制も強め、政権にたてつく人々を取り締まったのです。

 ――経済政策に限ると国民の支持を受けていたのですか。

 ◆経済は安定してきて、「ソ連崩壊後の大混乱は二度とゴメン」という人たちも多く、支持はされていました。

 多くの国民にとってプーチン氏は「皇帝」のようなものです。経済政策はその「臣下」である首相や閣僚の責任であって、もし経済政策が失敗しても、それはプーチン氏の責任にはならないのです。

 年1回、プーチン氏の「国民との対話」がテレビ中継されます。そこで国民が経済のリアルな不満をプーチン氏に訴えると、プーチンは「責任者」である工場長や市長を…

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経済プレミア編集部

1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀・財研キャップ、副部長を経て論説委員(財政担当)。15年経済プレミア創刊編集長。19年から同編集部。22年4月に再び編集長に。同9月から編集部総括。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」など。16~18年度城西大非常勤講師。