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不況下のインフレが日本を襲う? 必要な経済政策は

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
食用油など店内の多くの商品が値上げされている=東京都練馬区のスーパー「アキダイ関町本店」で2021年11月11日、池田美欧撮影
食用油など店内の多くの商品が値上げされている=東京都練馬区のスーパー「アキダイ関町本店」で2021年11月11日、池田美欧撮影

 日本にとって本当に不幸なのは、コロナ禍から抜け出す前に、ロシアによるウクライナ侵攻が始まったことだ。コロナ禍では、サービス消費が停滞し、飲食店、レジャー、交通産業などが採算を悪化させた。3月21日にようやくまん延防止等重点措置が全国で終了し、失われた消費を取り戻そうとするところだった。

 しかし、2月24日にウクライナ侵攻が始まり、事態は暗転した。原油価格(WTI=米国産標準油種)は2021年平均で1バレル=66.8ドルだったが、22年3月平均は同108.3ドルに上昇した。原油以外でも、非鉄や小麦などの国際商品市況が上がっている。

 日本の購買力の“海外流出”が長期化すると、景気も変調をきたすことになるだろう。経常収支は21年12月と22年1月に2カ月連続で赤字に転落した。このデータはウクライナ侵攻前のもので、2月以降も経常赤字が恒常化するリスクがある。経常赤字になると日本の潤沢な対外純資産も減少し、これは日本にとって危険なシグナルだ。

スタグフレーションの危険性

 日銀が金融政策決定会合後に行っている黒田東彦総裁の記者会見で、最近、記者から「スタグフレーションになる危険性はないのか」と…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。