近藤伸二のアジア新潮流

上海コロナ禍「チャイナセブン候補」まさかの動画拡散

近藤伸二・ジャーナリスト
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封鎖地域を移動する防護服姿の人々=上海市で2022年3月28日、ロイター
封鎖地域を移動する防護服姿の人々=上海市で2022年3月28日、ロイター

 ゼロコロナ政策で感染者の増加を封じ込めてきた中国で、上海を中心に感染者数が急増している。中国の政治・経済を長年見てきた元追手門学院大学教授の近藤伸二さん(65)に、経済への影響や、秋の共産党大会で3期目に入るとみられる習近平政権の基盤に影響する可能性はあるのかを聞いた。

 ――上海でコロナウイルスの感染者数が急増しています。経済の中心地ですね。

 ◆上海は人口2400万人の巨大都市です。そこで都市封鎖が行われ、しかも長期化しています。市民生活に大きな影響が出ていますが、周辺も含めて工場の操業が止まっているとの報道があります。モノ作りの根幹の部分に影響が出ており、この先、中国経済全体に影響が広がると思います。

厳格な「ゼロコロナ政策」

 ――中国当局は「ゼロコロナ」を続けてきました。感染者が出ると都市封鎖を徹底し、空港などでの検疫を厳格にする政策ですが、修正の可能性は?

 ◆ゼロコロナ政策は中国政府の売り物です。2年余り前に武漢市から始まったコロナ禍ですが、欧米などで感染者数が急増したのに比べ、中国は抑え込んできました。「中国はコロナ対策に成功した」が習政権の偉大な実績であり、中国の体制が欧米などより優れている証明だとPRしています。

 なので、いまゼロコロナ政策をやめるわけにはいきません。基本線は変えられないと思います。これまでの政権の功績を否定することになりますから。それが権威主義体制の宿命です。

 ――ゼロコロナ政策を続けてうまくいかなければ……。

 ◆見通しはわからないとしか言えません。厳しい対策を続ければ感染者数は抑えられるでしょうが、経済への影響も広がります。ただ、それをどう評価するかもありますし、国民が不便さを感じようとも、共産党政権の優位性をアピールすることが優先されるのは間違いないでしょう。

 ただ、部品供給が滞って、日本国内の自動車メーカーや台湾の電気機器メーカーなどの工場が一時停止する事態も起きています。ロシアのウクライナ侵攻で資源高に拍車がかかっていて、中国の景況感は悪化しています。経済が想定以上に落ち込めば、人々の不満が高まるでしょう。

「チャイナセブン」人事への影響

 ――共産党の上海市トップの李強・党委員会書記に市民が抗議したとされる動画が、SNS(ネット交流サービス)で拡散しています。

 ◆李氏は習氏の側近です。言論が厳しく統制される中国でそうした動画が広がること自体が、異例のことだと言っていいでしょう。

 中国は秋に5年に1度の共産党大会が予定されていて、そこで習近平総書記が3期目に入るのが既定路線です。党大会では「チャイナセブン」と呼ばれる7人の政治局常務委員の人事があります。習氏が残ることは確実視されていますが、かなり入れ替わると言われています。

 その李氏も、常務委員への昇格候補の一人と言われています。ですが、今の時期に失敗があると、その…

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近藤伸二

ジャーナリスト

 1956年神戸市生まれ。79年毎日新聞社入社。香港支局長、台北支局長、大阪経済部長、論説副委員長などを歴任。2014年追手門学院大学教授。22年3月に退職し、その後、ジャーナリストとして活動。著書に「彭明敏 蔣介石と闘った台湾人」「アジア実力派企業のカリスマ創業者」など。