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ウクライナ侵攻で「有事の円買い」なぜ起きない

川口雅浩・経済プレミア編集長
1ドル=126円台となった円相場を示すモニター=東京都港区の外為どっとコムで2022年4月13日、吉田航太撮影
1ドル=126円台となった円相場を示すモニター=東京都港区の外為どっとコムで2022年4月13日、吉田航太撮影

みずほ証券・上野泰也氏に聞く(2)

 「円の評価が下がったから円売りになったわけではない」。みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也さんは、ロシアのウクライナ侵攻をはさみ、3月上旬から急速に進む円安・ドル高についてこう語る。どういうことなのか。

 ――円相場は約20年ぶりに一時1ドル=126円台を付けるなど、1カ月余りで10円程度の急激な円安・ドル高となりました。要因は何でしょうか。

 ◆金融政策のベクトルを見た時、米連邦準備制度理事会(FRB)はウクライナ情勢を受け、どんどん利上げの方向に動いています。日銀は緩和続行ですから、日米の金利差からドル高の方向へ動くのは違和感がありません。市場は素直に日米の金融政策の方向感の違いを感じ、一気に円安が進んだのだと思います。

かつては「有事の円買い」

 ――かつては「有事の円買い」と言われ、リーマン・ショックや東日本大震災の際に円高が進みましたが、今回は円買いが起きていません。円の評価が下がったのでしょうか。

 ◆今回はいろんな要因があります。ウクライナ侵攻前から資源高は続いており、日本は2021年12月、22年1月と単月で経常赤字となりました。日銀の金融緩和継続もあり、市場には円買いを妨げる要因ばかりが並んでいます。

 2月の経常収支は黒字でした。これからも単月で赤字はあるかもしれませんが、赤字基調になったというのは間違いで、黒字基調に戻るはずです。今が転換点かといえば…

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経済プレミア編集長

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。