
みずほ証券・上野泰也氏に聞く(3)
「日銀の2%の物価目標は間違っている」。みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也さんは日銀の異次元金融緩和に異論を呈した。この目標にこだわる限り異次元緩和は永久に終わらず、日銀は政府と協議して2%の物価目標を修正すべきだというのが上野さんの主張だ。
――世界的な物価上昇で、日本でも生鮮食品を除く消費者物価指数が4月以降、前年同月比で2%台に上昇する可能性があります。「2%」という日銀の物価目標が達成されることになるのでしょうか。
◆それは全く違います。2%台になるとしても、たまたま世界的なコスト高でそうなるだけです。コストが押し上げるインフレであって、国内の需要に起因するものではありません。時間がたってコスト高が落ち着けば、物価上昇も収まるわけで、持続性がありません。これはエコノミストも日銀も共通の見解だと思います。
金融政策の変更は?
――日銀の黒田東彦総裁が想定する「賃金上昇を伴う、よい物価上昇」ではないというわけですね。
◆むしろ今回は「悪い物価上昇」のきらいがあります。金利上昇の局面で、日銀が金融政策の修正に乗り出すのではないかというエコノミストもごく一部にいますが、私はないと思います。
――そもそも賃金の上昇を伴う「2%の物価上昇」など実現できるのでしょうか。
◆私は日銀の2%の物価目標は間違いだと思っています。目標が高すぎます。日本経済の実力、これまでの…
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川口雅浩
経済プレミア編集部
1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。