ニッポン金融ウラの裏

メガバンク「花形職場のエリート行員」転職相次ぐワケ

浪川攻・金融ジャーナリスト
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ずらりと並ぶ銀行の看板=東京都江東区で2018年7月15日、武市公孝撮影
ずらりと並ぶ銀行の看板=東京都江東区で2018年7月15日、武市公孝撮影

 メガバンク3行の新卒採用が大幅に減少している。5年ほど前までは3行とも1000人規模の大量採用をしていたが、今はほぼ3分の1だ。その背景と、銀行の人事戦略を左右しかねない「人材流出」という想定外の事態を報告する。

 まず、メガバンク3行の2022年春の新卒採用数を見よう。三菱UFJ銀行が380人、三井住友銀行が472人、みずほは410人だった。みずほは、みずほフィナンシャルグループ、みずほ銀行、みずほ信託銀行の合計数だ。

 翌23年春の採用予定数は、三菱UFJ銀行が320人、三井住友銀行が400人、みずほが380人と、さらに絞られる。3行合わせて今春の9割弱だ。直近の採用のピークは16年で、3行で5000人以上が採用されており、この6~7年で急激に減少している。

新規採用削減の背景

 背景には、17年以降に3行が取り組んだ業務改革がある。長引く低金利で収益力の低下に直面し、各行は「ビジネスモデルの変革」を相次いで打ち出した。柱の一つが店舗の小型化による採算性の改善だ。

 経済成長期に預金集めに力を発揮した支店は、「コスト割れ」「収益性が悪い」としてモデルチェンジを求められた。各行はデジタル技術を積極的に導入し、人手に依存する事務業務を効率化した。業務量を減らし、事務センターへの業務集約を進めた。支店の人数を絞り、人員を営業部門にシフトさせた。

 さらに「自然減」による総人員数の圧縮を行った。銀行員の多くは、一定年齢になると関連会社や取引先企業に順次転籍し、それが実質的な定年退職につながる。この人員減を穴埋めしないのだ。そして、新卒採用の絞り込みも行ったのである。

花形の企画部門でも

 メガバンク3行では、狙った総人員削減が着実に行われてきた。ただし、その一方で想定しない事態が起きている。中核的な行員の中途退職、すなわち人材の外部流出である。銀行界、とくにメガバンクでは考えられなかった出来事だ。

 ここ数年、地銀では若手行員の流出が続いていた。20代から30代前半の若手が地銀の将来に不安を感じ転職していった。それがいまメガバンクで、30代後半くらいの将来を期待されていた中堅行員の中途退職が相次いでいるのだ。

 本部の役職者や、支店の次席、そして銀行業務の花形といえる営業部門や、えり抜きのエリートで固めた企画部門も例外ではない。転職先はさまざまだが、外資系コンサルティング会社など…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。