近藤伸二のアジア新潮流

「ロシア協調一色」の中国にも“プーチン離れ”求める声

近藤伸二・ジャーナリスト
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首脳会談を行った中国の習近平主席(右)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領=北京で2022年2月4日、AP
首脳会談を行った中国の習近平主席(右)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領=北京で2022年2月4日、AP

 ロシアのウクライナ侵攻から2カ月近く。中国は欧米や日本と一線を画し、ロシアとの協調路線を堅持しています。中国を長年ウオッチしてきた元追手門学院大学教授の近藤伸二さん(65)は、一枚岩に見える中国指導部にも異論はあるはずだと考えていて、その一端が今回、垣間見えたと話します。

 ――ウクライナ侵攻後の中国の立ち位置を伺います。

 ◆中国は、米国への対抗から、ロシアとの関係を悪化させたくありません。ロシアへの経済制裁に一貫して反対しています。その半面、これだけ悪者になり孤立したロシア側と結託していると見られたくはありません。いってみれば「中立を装う」ですが、中途半端な姿勢が続いているのは否めません。

 中国にとって想定外だったのは、欧州が一致団結してロシアを非難し、経済制裁を発動したことです。とくにドイツはエネルギーをロシアにかなり依存しており、関係をそこまで悪化させないと見ていたはずです。それが欧米各国とこれほど同一歩調をとってきたことは中国には驚きだったと思います。

 ――王毅外相が「対露協調」でアジア、アフリカなど各国に外交攻勢をかけています。その狙いは?

 ◆アジアでは、日本こそ主要7カ国(G7)の一員として対露非難を強めていますが、他の多くの国々は温度差があります。もちろん「ロシアは悪い」と批判はしますが、制裁には加わらない国が多いです。インドあたりはロシアから兵器を輸入してきた関係があり、中国よりロシアに近いかもしれません。

 アフリカもそうです。中国はそうした国々を味方につけられると判断したのでしょう。王毅外相が対面やオンラインで二十数カ国と協議しています。米欧日とは一線を画そうという働きかけです。

「制裁逃れ」には慎重か

 ――米欧日の対露制裁も、中国が抜け穴にならないかと見られています。

 ◆バイデン米大統領が3月、習近平国家主席と行ったオンライン首脳会談でそこにクギを刺しています。その後、中国が制裁逃れに一役買ったという事実は今のところ、明らかになっていません。中国は、仮にロシアと組めばエネルギーや軍事面でメリットはあるのかもしれません。でも、米欧との対立関係が激しくなり、ハイテクや製品が導入できなくなれば大ごとです。さすがに慎重になっていると思います。

 ――歴史的には「中露対立」の時期もありました。それが今は良い関係ですね。

 ◆1960年代に国境紛争が起き、局地的に武力衝突もありました。中露対立の構図を見て米国が中国に接近したのが70年代のニクソン大統領訪中と国交正常化です。ただ、90年代の江沢民政権のときに国境画定が進み、それ以降は中国とロシアは良好な関係が続いています。

 中国の世界観は「米国一極体制」を嫌います。中国はもちろん、欧州もロシアもといった多極化を志向しています。ロシアがここで一気に力を失うと米国の存在感が大きくなりすぎるので困るというのが中国の立場です。

体制寄りの政治学者の「提言」

 ――ロシア協調一色の中国ですが、体制内で異論はないのですか。

 ◆政府や共産党の幹部には、ロシア協調の方針に反する言及は一切ありません。ただ、政府に政策…

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近藤伸二

ジャーナリスト

 1956年神戸市生まれ。79年毎日新聞社入社。香港支局長、台北支局長、大阪経済部長、論説副委員長などを歴任。2014年追手門学院大学教授。22年3月に退職し、その後、ジャーナリストとして活動。著書に「彭明敏 蔣介石と闘った台湾人」「アジア実力派企業のカリスマ創業者」など。