近藤伸二のアジア新潮流

プーチン大統領の「核兵器の脅し」台湾は衝撃を受けた

近藤伸二・ジャーナリスト
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ロシアのプーチン大統領=2022年3月30日、AP
ロシアのプーチン大統領=2022年3月30日、AP

 ロシアのウクライナ侵攻は、中国と台湾の関係にどのように影響しているでしょうか。中国、台湾の専門家、近藤伸二・元追手門学院大学教授(65)に聞きます。近藤さんは、プーチン露大統領が核兵器の使用を「脅し」として言及したことに、台湾が強い衝撃を受けていると指摘します。

 ――中国の指導部はロシアの軍事侵攻がウクライナの激しい抵抗でドロ沼化しているのをどう見ているでしょうか。

 ◆最初は、「ロシアは短期間でウクライナを制圧する」と見ていたと思います。中国の指導部だけではなく、世界的にその見方が大勢でした。首都キーウ(キエフ)を制圧して傀儡(かいらい)政権を樹立し、事実上の指導下に置くのがロシア側の狙いでしたが、軍事侵攻が1カ月以上も続くのは想定外だったと思います。

 ウクライナは言ってみれば孤軍奮闘です。ですが激しく戦っています。プーチン大統領のもくろみは大きく外れました。中国はこの状況を注視しているでしょうね。

習政権の姿勢は変わらず

 ――言い方は悪いですが、中国指導部には「教訓」や「反面教師」でしょうか。

 ◆国際社会を敵に回して、台湾の武力統一を目指すことがまったく簡単ではないと指導部は改めて実感していると思います。しかもロシアとウクライナは地続きで、中国と台湾は海を挟んでいます。その意味で、台湾への侵攻ははるかに難しいと言われています。

 仮に上陸に成功しても、台湾は相当な抵抗をするでしょう。台湾はずっと武力侵攻を意識して準備を進めてきています。

 ――中国側の台湾に対する言動に変化は?

 ◆習近平政権の姿勢は変わらないと思います。「台湾は必ず統一する。それが中華民族の偉大な復興であり、中国の夢だ」ということです。あとは時期の問題だけです。この考えに反対することは絶対にできません。習氏の力が強くなり、反対意見は表に出にくくなっています。

 ウクライナの現状を見て、そう簡単ではないと思っている人も多いでしょうが、公然と口にする人はいません。一方、人民解放軍は台湾侵攻に関しては常に強硬派です。「いつでも軍事侵攻できる準備は整っている」と威嚇しています。

台湾側の見方は

 ――台湾側の見方はどうでしょうか。

 ◆報道を見ると、ウクライナ侵攻が起きた当初は「次は台湾だ」と浮足立つ感じもありました。でも、ロシアの軍事侵攻が長期化しているのを見て、「短期的に見れば、台湾への武力侵攻はむしろ遠のいた」との見方が出ています。「大が小をのみ込もうとしても、小は大に勝てる」といった論調もあります。

 ただし、プーチン大統領が核抑止部隊に特別態勢を取るよう命じたという報道がありましたね。核兵器の使用を辞さない姿勢です。核兵器が実際に「脅し」に使われたことに台湾社会はショックを受けています。

 ――具体的には?

 ◆中国も核兵器を持っています。「もし中国が軍事侵攻を仕掛けてきて、核兵器を脅しに使うよう…

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近藤伸二

ジャーナリスト

 1956年神戸市生まれ。79年毎日新聞社入社。香港支局長、台北支局長、大阪経済部長、論説副委員長などを歴任。2014年追手門学院大学教授。22年3月に退職し、その後、ジャーナリストとして活動。著書に「彭明敏 蔣介石と闘った台湾人」「アジア実力派企業のカリスマ創業者」など。