職場のトラブルどう防ぐ?

パワハラ研修は「寝た子を起こす?」思わぬ抵抗勢力

井寄奈美・特定社会保険労務士
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 A太さん(38)は従業員数200人の機械部品製造販売の会社へ1年前、人事課長ポストで転職してきました。前職も人事部で「働き方改革」を担当した実績があり、新しい会社でも自分の力を発揮したいと考えていました。

 転職先の会社は、新卒で入社して定年まで働く人も多くおり、堅実な経営をしている印象を持っていました。ただ、リーマン・ショック後の一時期に新卒採用の人数を減らしており、平均年齢が上がっているのが気になりました。

 40代後半以上の社員が多いのに対し、30代から40代前半は少なく、新卒で入社した20代の社員の離職率が上がっていました。会社はA太さんのようなキャリアのある人材を中途採用で補充していましたが、中途採用で入社した人も定着がよいとは言えないようでした。

 A太さんは若手社員の育成や定着が急務だと考えました。社員の平均年齢が高くなると、若手との考え方のすれ違いが生じやすくなります。

パワハラ防止の規定入れたが

 A太さんは入社後、まずは就業規則の見直しに着手しました。就業規則を見直す過程で、中小企業についても2022年4月からパワーハラスメント防止のための各種措置をとらなければならないことをA太さんは上司に伝えました。

 その際に「これまでパワハラ防止の研修を実施していたのか」と聞いたところ、上司は「研修なんて開催したら寝た子を起こすことにならないか。あれもこれもハラスメントだと騒ぎ立てられて、上司が指揮命令しにくくなるんじゃないか」と言います。就業規則にパワハラ防止の規定は入れたものの、それだけでよいのか、A太さんは悶々(もんもん)としています。

 A太さんは、若手社員から上司の指導方法について…

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井寄奈美

特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/