
飯田哲也さんに聞くテスラのすごさ(1)
「電気自動車(EV)の米テスラは研究すればするほど、ちょっと圧倒させられます。変化のスピードが速く、産業へのインパクトも半端ではありません。トヨタ自動車がおっとり構えていて大丈夫なのかなと心配になります」
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長はイーロン・マスク氏率いるテスラに研究者として強い関心をもっている。飯田さんは、かつて日本が世界をリードしながら国際競争で敗れていった半導体、家電、液晶、太陽光パネルに続き、日本の自動車産業も、このままでは「沈没」のリスクがあると指摘する。
飯田さんがまず注目するのは、既存の自動車メーカーを圧倒するテスラのEVの生産拡大と技術革新の速さだ。
トヨタより早く「2025年500万台」目標達成か
「毎年50%の生産拡大を公約するテスラは2020年に50万台、21年に93万台のEVを生産しました。22年は独ベルリンと米テキサスで新工場が完成し、公約通り150万台超の生産が見込めます。アルミ一体鋳造など新技術を盛り込んだ新工場は既存メーカーの3倍の製造速度を実現しています。このペースなら25年に500万台というテスラの目標にも届きそうです」
21年にテスラが生産した93万台とは、日本メーカーでいえばSUBARU(スバル)、22年の150万台はマツダの年間生産台数と並ぶレベルだ。「トヨタの豊田章男社長は30年にEVを350万台販売すると発表しましたが、テスラの技術開発と生産拡大は速く、30年よりもずっと前の時点で台数だけでなく、自動運転などの技術を含め、トヨタが追いつけないレベルになっているのではないでしょうか」
世界のペースメー…
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川口雅浩
経済プレミア編集部
1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。