
「今日でも明日でも」「数日以内に起きる恐れ」――。ロシアのウクライナ侵攻について、バイデン大統領はじめ米政府高官は2月中旬に、連日のように警告を発した。ワシントン特派員の鈴木一生記者(45)は、侵攻を想定していたものの実際に首都キーウ(キエフ)が攻撃されたのを見て「本当に来たかと目を疑いました」と振り返る。
バイデン大統領の演説
2月18日、バイデン大統領がホワイトハウスで演説に臨み、「ロシアのプーチン大統領がウクライナへの侵攻を決断したと確信している。そう信じるに足る理由がある」と説明しました。
そのうえで「ロシアは外交の道を選択できる。緊張を緩和して交渉のテーブルに着くのは今からでも遅くはない」とプーチン氏に呼びかけました。バイデン大統領の演説からは、事態の悪化を正確に把握しながらも、最後まで外交解決の道を模索していた様子がうかがえます。
この演説は2月24日の侵攻開始の6日前にあたります。私はホワイトハウスから徒歩5分ほどの北米総局のテレビで見ました。バイデン大統領はこれまで「プーチン大統領の判断はわからない」と言っており、「決断したと確信している」と踏み込んだのに驚きました。
そして24日。軍事侵攻が始まったことを私は、夜中に自宅でCNNニュースを見て確認しました。キーウにいるCNNのリポーターが攻撃に身をかがめたのを見て、侵攻を想定はしていたものの、目を疑いました。本当にキーウが標的になり、米高官が言っていた「最悪のシナリオ」だと思いました。
3日目には「侵攻スピードが鈍化」
侵攻後も機密情報の積極的な公開は続いています。連日のように国防総省高官による記者向けの戦況説明があります。ロシアによる弾道ミサイルや巡航ミサイルの発射数から地上部隊の進攻状況などを細かく明らかにしています。
侵攻開始から3日目の記者団への説明では、ロシア軍が「燃料や軍備品の不足に直面している」と述べ、侵攻スピードが鈍化していることを早くも指摘しました。ウクライナ国境周辺に集結させた部隊の3分の2の戦力を攻撃に投入したものの攻めあぐねているとの分析を披露しています。
国防総省の高官は、侵攻の初期段階からロシア軍の後方支援の問題を挙げ、侵攻ルートが複雑で広範囲にわたっていることが原因となっているとの見方を示していました。
中国へのけん制も
侵攻が長期化するに従い、中国によるロシアへの経済・軍事的な支援も懸念されています。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は3月13、14両日に米政府関係者の話として、米情報機関の機密情報の一部を報じました。
その内容は▽ロシアは侵攻開始以降、軍装備品の一部が不足し出している▽中国に地対空ミサイルや無人航空機などの五つの武器供与を求めている▽中国にロシア側の要請に応じる兆候があり、米国は同盟国に外交公電で警戒を呼びかけた――などの内容です…
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