特派員が見た米露情報戦争

米の積極的なロシア情報開示 政権批判を避ける狙いも

鈴木一生・ワシントン特派員
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ウクライナのゼレンスキー大統領=キーウで2022年4月25日、ウクライナ大統領府提供・AP
ウクライナのゼレンスキー大統領=キーウで2022年4月25日、ウクライナ大統領府提供・AP

 ウクライナ侵攻をめぐる米政権の情報戦略を、ワシントンで取材する鈴木一生記者(45)はどう評価するか。「数日内に侵攻」といった正確な情報がある半面、侵攻を食い止めることができなかった現実もある。ロシア軍の攻撃のエスカレートを抑制できたのかについても、鈴木記者は「判断するのは時期尚早」と語る。

CIA長官は好意的

 バイデン政権は情報機関の機密情報を積極的に公開していますが、それによってロシアによる侵攻自体を防げたわけではありません。ロシア軍による攻撃のエスカレートや残虐行為を抑えることができているのかについても判断するには時期尚早です。

 情報機関の活動への影響は、今後明らかになるかもしれませんが、現段階での評価は難しいと思います。ただし米メディアによると、中央情報局(CIA)のバーンズ長官らは政権のこの戦略に賛意を示し、好意的に受け止めているようです。

 米国内の世論調査では、ウクライナへの軍事介入には反対が多い一方で、積極的な支援を求める人も増えています。ロシアとの軍事衝突に発展させない範囲内で、できることは何でもやっているとの姿勢をアピールすることは、政権批判が高まった場合の「保険」や「言い訳」の意味合いが強いと思います。

語らない「ウクライナ軍の動き」

 情報の積極的な公開は、全く何が起きているか分からない状態よりはましだと思います。ですが、その公開は非常に一方的で、根拠や詳細な説明がない場合がほとんどです。その理由は、情報源の保秘や情報の入手方法を秘匿するためです。

 侵攻前ですが、国務省の記者会見では公開した情報の根拠を示すように求めた記者と報道官が押し問答になる場面もありました。

 また、国防総省高官の記者団に対する戦況分析などの説明も、ロシア軍の行動や状況は詳細に説明するのですが、ウクライナ側についてはほとんど語りません。ウクライナ側が公表した戦果や被害を少し遅れて米軍として確認するのみです。

北朝鮮情勢でも「事前警告」

 積極的な機密情報の公開が、バイデン政権の危機対応に向けた戦略の一つになりつつあります。

 例えば、北朝鮮の核・ミサイル開発問題ですが、米インド太平洋軍は3月9日の声明で、黄海で情報収集や監視活動を拡充していると発表しました。地域の弾道ミサイル防衛部隊にも即応態勢を命じたと明かしています。

 北朝鮮のミサイル発射直後に声明を出すことはあっても、警戒状況を発表したことはなく異例の声明でした。

 10日には、2月と3月に北朝鮮がミサイルを発射した際の分析結果を公表し、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射に使用可能な新たな発射装置を実験した」としています。

 日本政府は翌11日に「米国と分析を進めた結果、2月と3月のミサイルは新型のICBM級だった」と発表しています。その後、北朝鮮は24日になって新型ICBM「火星17」の試験発射を実施したと主張…

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鈴木一生

ワシントン特派員

ワシントン特派員。横浜支局、東京社会部、福岡報道部、外信部兼政治部などを経て、2020年4月に北米総局へ着任。米国の外交・安全保障や社会問題などを追いかけている。過去には東京地検特捜部や裁判所、法務省、外務省などを担当した。