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認知症になると株式強制売却?「2世代投資」のススメ

岩城みずほ・ファイナンシャルプランナー
 
 

 会社員のA太さん(47)は、高齢になった父親(75)の資産管理のあり方を気にしています。先日、知人から「父親が認知症になって法定後見人がつき、保有する上場株式の運用が認められず、意に反して売却せざるを得なかった」という体験談を聞いたからです。

 A太さんは将来、父親の資産を相続する予定ですが、上場株式は売却せずに運用を引き継ぎたいと思っています。下落局面で売ることは避け、長期運用で資産を増やしたいと考えるためです。「そのためにはどんな方法がありますか」と相談に訪れました。

あらかじめ備える「任意後見制度」

 親が認知症になって判断能力を失い、自らの判断で金融取引を行えなくなると、親の預金口座や証券口座は凍結され、預金を引き出したり、金融商品を売買したり、上場株式の運用を続けたりすることができなくなります。

 また、高齢になると一般に、運用可能な期間が短くなってリスク許容度が下がります。このため、高齢者は、資産全体に占める株式の割合を下げ、比較的リスクの低い債券や、預金の比率を増やしたほうがいいという考え方もあります。

 しかし、子が親の資産を引き継ぎ、世代を超えて株式を保有する「2世代投資」を続け、投資期間が長くなれば、より良い成果を期待することができます。

 親が認知症になっても「2世代投資」を続けるには、「任意後見制度」や「家族信託」を活用する方法があります。いずれも事前に手続きする必要があります。

 まず、任意後見制度から説明しましょう。

 認知症などで判断能力が不十分になると、財産を管理したり契約を結んだりすることが難しくなります。そうした人を保護し支援するのが「成年後見制度」で…

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ファイナンシャルプランナー

CFP認定者、社会保険労務士、MZ Benefit Consulting 代表取締役、オフィスベネフィット代表、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、顧客本位の独立系アドバイザーとして、家計相談、執筆、講演などを行っている。著書に「結局、2000万円問題ってどうなったんですか?」(サンマーク出版)など多数。