
ロシア語学者に聞くウクライナ侵攻(1)
「ロシア語とウクライナ語は元をたどれば一つの共通言語でしたが、歴史的にロシアはウクライナ語を弾圧してきました」。ロシア語が専門で、ロシアとウクライナの言語や文化に詳しい井上幸義・上智大学名誉教授(69)はこう語る。どういうことなのか。両国の言語や文化の違いを通して、戦火を交える両国の関係について聞いた。
――ロシアとウクライナは歴史的、文化的に親戚のような関係にあると言われますが、お互い言葉は通じるのでしょうか。
◆もともと9世紀の「キエフ・ルーシ」(キエフ大公国)の時代は、ロシア人とウクライナ人の祖先は共通の言語を話し、ロシア人やウクライナ人という区別もありませんでした。彼らの先祖に当たるスラブ人はキエフを中心に生活していましたが、13世紀ごろにモンゴル人が侵入し、東と西と南に分かれました。それがだんだん方言になっていって、17世紀にロシア語、ベラルーシ語、ウクライナ語に分化したと言われています。
ポーランド人とウクライナ人がしゃべっているのをロシア人が聞いて、どれだけわかるかという動画がユーチューブにあります。ロシア人はウクライナ語ならなんとなくわかりますが、ポーランド語はほとんどわからないそうです。
私はロシア語が専門ですが、ウクライナのゼレンスキー大統領の演説を聞いても、なんとなくわかります。書面で読めば、だいたい理解できます。
――読んでわかるのは、同じキリル文字を使っているからですか。
◆そうです。文字のほか、主語と目的語の関係や単語の変化など類似点はたくさんあります。ただし、つづりは同じでも意味が違う単語がいくつかあります。
ロシア語の「週」がウクライナ語では…
この記事は有料記事です。
残り1206文字(全文1924文字)