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「ロシアはウクライナ語を弾圧した」露言語学者が語る

川口雅浩・経済プレミア編集長
ウクライナ人とロシア人の民族友好を象徴したソ連時代のモニュメント。一部の像は4月下旬に撤去され、台座だけが残る=ウクライナの首都キーウ中心部で2022年5月1日、真野森作撮影
ウクライナ人とロシア人の民族友好を象徴したソ連時代のモニュメント。一部の像は4月下旬に撤去され、台座だけが残る=ウクライナの首都キーウ中心部で2022年5月1日、真野森作撮影

ロシア語学者に聞くウクライナ侵攻(1)

 「ロシア語とウクライナ語は元をたどれば一つの共通言語でしたが、歴史的にロシアはウクライナ語を弾圧してきました」。ロシア語が専門で、ロシアとウクライナの言語や文化に詳しい井上幸義・上智大学名誉教授(69)はこう語る。どういうことなのか。両国の言語や文化の違いを通して、戦火を交える両国の関係について聞いた。

 ――ロシアとウクライナは歴史的、文化的に親戚のような関係にあると言われますが、お互い言葉は通じるのでしょうか。

 ◆もともと9世紀の「キエフ・ルーシ」(キエフ大公国)の時代は、ロシア人とウクライナ人の祖先は共通の言語を話し、ロシア人やウクライナ人という区別もありませんでした。彼らの先祖に当たるスラブ人はキエフを中心に生活していましたが、13世紀ごろにモンゴル人が侵入し、東と西と南に分かれました。それがだんだん方言になっていって、17世紀にロシア語、ベラルーシ語、ウクライナ語に分化したと言われています。

 ポーランド人とウクライナ人がしゃべっているのをロシア人が聞いて、どれだけわかるかという動画がユーチューブにあります。ロシア人はウクライナ語ならなんとなくわかりますが、ポーランド語はほとんどわからないそうです。

 私はロシア語が専門ですが、ウクライナのゼレンスキー大統領の演説を聞いても、なんとなくわかります。書面で読めば、だいたい理解できます。

 ――読んでわかるのは、同じキリル文字を使っているからですか。

 ◆そうです。文字のほか、主語と目的語の関係や単語の変化など類似点はたくさんあります。ただし、つづりは同じでも意味が違う単語がいくつかあります。

 ロシア語の「週」がウクライナ語では…

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経済プレミア編集長

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。