
「ロシアが瓦解(がかい)するまで、ウクライナの人は国外退避してもいいのではないか」。ロシアによるウクライナ侵攻に関して弁護士の橋下徹氏が3月、ワイドショーでこうコメントした。退避したらロシアの思うつぼでは? ロシアの瓦解、何を根拠に?と思った。ネットは大炎上した。
別のワイドショーでは女性芸能人が、ウクライナから隣国に逃れた母子の映像にコメント。「子供を持つ母親としてつらいのはよく分かります。早く戦争が終わってほしいですね」。母親でなくても同じだろう。
何を言うのも自由だ。が、ウクライナ侵攻ほど、ワイドショーのコメンテーターの存在や役割を考えさせられたことはなかった。
テレビプロデューサーの分析
テレビプロデューサーの鎮目博道さんが「FRIDAYデジタル」(3月28日配信)で背景を分析している。
鎮目さんによると、ワイドショーを作っているのは報道局ではなく、他の部局や地方テレビ局。映像などは報道局が取材したものなどを使わざるを得ない。映像に合わせた原稿を書くこともない。結果、「パネル解説」や「コメンテーターたちの感想」などに頼る。
レギュラーコメンテーターはウクライナ、ロシア、戦争などに関する専門知識を持ち合わせていないことが多い。それでも「その人たちが『スタジオにいるからには、何かコメントせざるを得ない状況』に追い込まれている」と鎮目さんは言う。
埋め草にだけは……
専門知識がなくても、うまく補えていることもある。だが、できないコメンテーターは単なる埋め草になる。サンデー毎日の編集長だった時、ワイドショーのコメンテーターをしていたことがある。政治など自分が取材してきた分…
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山田道子
元サンデー毎日編集長
1961年東京都生まれ。85年毎日新聞社入社。社会部、政治部、川崎支局長などを経て、2008年に総合週刊誌では日本で最も歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長、紙面審査委員。19年9月退社。