
中国・台湾のコロナ禍(上)
中国と台湾で新型コロナウイルス感染が急速に広がっている。ともにこれまで厳しい対策で臨み、台湾は国際社会で「優等生」と称賛された。中国も「世界で最も成功している」と自賛していたが、今や市民生活や企業活動に深刻な影響が出ている。中台の苦闘と、双方の経済一体化がダメージを拡大している現状を2回に分けて報告する。
「6月にピーク」を予測
台湾では5月19日に1日の感染者が9万378人と初めて9万人を超え、累計数は107万561人と大台に乗った。累計死者数も1235人に達した。台湾の人口は約2385万人と日本の5分の1弱なだけに、最近の台湾の感染者の多さは際立つ。
オミクロン株が主流となり、4月28日に1日1万人を突破したころから、爆発的な増加が止まらなくなった。中央感染症指揮センターのトップである陳時中・衛生福利部長(衛生福利相)は、感染は6月10日ごろにかけてピークを迎え、7月には減少に向かうとの見通しを明らかにしている。
この感染者増には理由がある。蔡英文政権は2020年に感染が始まって以来、厳格な水際対策や隔離などの「ゼロコロナ」政策で封じ込めてきた。情報公開や説明責任などを怠らず、住民の理解を得ることに努めてきたこともあって、世界でモデルケースともてはやされた。
「ゼロ」から「ウィズ」に転換
しかし蔡政権は、「オミクロン株の感染力は強いものの、99.68%は軽症か無症状だ」として、4月から「新台湾モデル」と呼ぶウィズコロナ政策に切り替えた。「重症者をゼロにし、軽症者をコントロールする」方式だ。軽症者や無症状者には自宅待機を要請し、隔離期間を10日から7日に短縮した。
感染者増は想定内で、蔡総統も慌てないよう呼び掛けていた。だが、歯止めがかからない増加の勢いに、住民の間で不安や不満も高まっている。
台湾は感染初期にマスク不足に陥った際、政府…
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