
「今、おカネをどこに置いておくべきか、機関投資家は本当に困っている」。マネックス証券の大槻奈那・専門役員チーフ・アナリストはそう語る。株や為替など世界のマーケットは急速に「リスクオフ」(リスクを取ることを控える)に動いている。
新型コロナウイルスの感染拡大に加え、ロシアのウクライナ侵攻、中国のゼロコロナ政策の行き詰まり、米欧を中心に世界的に高まるインフレと、それに対する米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め--など、市場を揺るがす不安定要素が多く、マーケットの先を読めなくなっているのだ。
FRBの利上げペースはどうなるか
そのような中、米国株が下落に転じている。ダウ工業株30種平均は週単位で見て、5月20日の終値3万1261ドルが90年ぶりの8週連続の下げという歴史的なものになった。
ダウは、新型コロナ対策の大量の資金供給も追い風にして上昇。コロナ後の底値1万8591ドル(2020年3月23日)から、今年1月4日には過去最高値の3万6799ドルをつけて約2倍に上昇した。しかしこの2カ月で約1割下落。上昇トレンドにも転機が訪れているようだ。
株価に対する投資家の不安心理を示す「VIX指数(恐怖指数)」は5月以降、25~35のレンジで推移している。「VIX指数が20を超えると不安定な状態。今は積極的に買いにいける状態にはない」とニッセイ基礎研究所の井出真吾・チーフ株式ストラテジストは見る。
米国株下落の直接的な要因は、8%を超えた米国の歴史的な高インフレに対するFRBの金融引き締めだ。
FRBは3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で2年ぶりにゼロ金利政策を解除。5月4日の…
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