
中国・台湾のコロナ禍(下)
中国に進出している台湾企業の工場操業停止が相次いでいる。新型コロナウイルス感染拡大の封じ込めに向けた中国の「ゼロコロナ」政策の影響だ。iPhoneを台湾企業に製造委託する米アップルの足も引っ張っており、ゼロコロナ政策がIT業界のリスクになっている。世界的な不足が続く半導体に影響が飛び火するのかも注目される。
中国には電子機器を受託製造する台湾企業の工場が集中している。世界最大手の鴻海精密工業や和碩聯合科技(ペガトロン)、仁宝電脳工業(コンパル)、広達電脳(クアンタ)などだ。
鴻海とペガトロンはアップルのスマートフォン「iPhone」、コンパルはタブレット端末「iPad」、クアンタはノートパソコン「MacBook Pro」の生産を主に請け負っている。アップルの製品の大半はこうした台湾企業が製造している。
これらの企業は、河南省鄭州市、上海市や隣接する江蘇省昆山市、広東省深圳市に主力工場を構えている。この3地区では3月以降、コロナ感染が拡大し、相次いで都市封鎖(ロックダウン)の措置が取られた。
アップル新製品の出荷に遅れ
クアンタの上海工場は4月初めから稼働を停止しており、完全再開は6月末になる見通しだ。ペガトロンやコンパルも4月に上海や昆山の工場を一時停止した。5月に入って一部操業を再開したものの、全面回復には至っていない。
台湾経済部(経済産業省)は4月12日、上海と昆山に工場を構える台湾企業161社が操業を停止していることを明らかにした。鴻海は今のところ、操業は正常としているが、最大拠点の鄭州も5月から封鎖されており、先行きには不透明感が漂う。
こうした状況を受け、アップルは新製品の出荷が2カ月ほど遅れる事態に。4~6月期に5000億~1兆円の売り上げ減少を見込んでおり、業績を直撃している。株価も上海でロックダウンが始まった3月末から2割近く下落し、原油高もあるとはいえ5月中旬にサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコに時価総額トップの座を明け渡した。
中国に拠点集中のリスク
米IT企業が製品を開発し、台湾企業が受託して中国の工場…
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