経済プレミアインタビュー

悪い円安でも「黒田緩和にこだわる」日銀の不都合な事情

川口雅浩・経済プレミア編集部
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衆院予算委員会で野党議員の質問を聞く日銀の黒田東彦総裁=国会内で2022年5月26日、竹内幹撮影
衆院予算委員会で野党議員の質問を聞く日銀の黒田東彦総裁=国会内で2022年5月26日、竹内幹撮影

日本総研・河村小百合氏に聞く(2)

 「マイナス金利の解除など日銀の柔軟な金融政策で円安は止められる」。日本総合研究所の河村小百合主席研究員はこう語る。河村氏が円安阻止のため、日銀に求める柔軟な金融政策とは何か。なぜ日銀はそれをやろうとしないのか。

 ――海外の中央銀行がインフレ抑制のため金融引き締めを行う中、日銀が追随できない理由とは何でしょうか。

 ◆日銀はイールドカーブ・コントロール(長期金利と短期金利を一定水準に誘導する金融政策)で、ずっと金利を抑え込んできました。このため日銀が買い入れる国債のクーポン(表面利率)もどんどん低くなってしまいました。

 日銀の近年の経常利益の推移を見ると、国債のクーポン収入が頭打ちとなる中で、上場投資信託(ETF)の運用益への依存度が年々拡大しています。利上げした場合、日銀は当座預金への付利コストの増加に耐えられません。日銀が負う年度当たりの付利コストは0.2%の利上げで約1兆円です。ちょっと利上げするだけで、日銀は赤字に転落してしまいます。

 もう一つの心配は財政運営への影響です。我が国の一般会計予算は1000兆円超の国債残高を抱えながら、低金利を維持することで利払い費をわずか年8兆円に抑えています。だからこそ、政府は予算を組めているのです。

「まだ諦めなくてよい」

 ――日銀が利上げすると、日銀が市中銀行へ支払う利子が増えて赤字となり、政府は国債の利払い費が増えて困るということですね。

 ◆私は日銀が今の局面で利上げしない本当の理由は、これらの問題が表に出るのを恐れているからだと思います。金融政策の正常化という出口戦略について、日銀の黒田東彦総裁は国会でもさんざん聞かれてきましたが、時期尚早と逃げて…

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川口雅浩

経済プレミア編集部

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。