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インバウンド解禁「物価安と円安」で訪日客は大喜び

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
外国人観光客のにぎわいは戻るのか……(新型コロナ感染拡大前の浅草の浅草寺)=2017年11月7日、井出晋平撮影
外国人観光客のにぎわいは戻るのか……(新型コロナ感染拡大前の浅草の浅草寺)=2017年11月7日、井出晋平撮影

 円安メリットを実感しにくい理由の一つに、これまで訪日外国人の観光が厳しく制限されていたことがある。

 円安になると、外国人は同じ外貨の金額でより多くの日本製品を買うことができる。日本での買い物が割安に感じる外国人観光客がたくさん来て消費をしてくれれば、それだけ日本経済が潤った。しかし、コロナ禍で観光目的での入国が制限されていたため、そのメリットを生かすことができなかったのだ。

 6月1日、政府は入国者数の1日当たりの上限を1万人から2万人に引き上げた。6月10日には、観光目的での入国を再開し、添乗員付きのグループ旅行を認める。2020年4月以来の外国人観光客の受け入れだ。

 これで、円安メリットを少しは生かすことができるようになる。1日当たり2万人だと年間では730万人。19年の3188万人と比べると約2割でしかないが、インバウンド解禁に方針転換したことの意義は大きい。

米国から日本に来ると3割も安い

 久しぶりに日本に来た外国人は物価の安さに驚くことだろう。コロナ前の19年平均のドル・円レートは1ドル=109円だった。22年4月が1ドル=130円とすると、19%も円の価値は安くなっている…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。