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VISAタッチやPayPay払い「Suicaの牙城」崩せるか

土屋武之・鉄道ライター
南海電鉄河内長野駅に置かれたVISAタッチ用端末
南海電鉄河内長野駅に置かれたVISAタッチ用端末

 Suica(スイカ)やICOCA(イコカ)といった交通系ICカードの「1強時代」に終わりは来るのか。今のところその強さに疑いを挟む余地はないが、新たな改札方式を模索する動きも続々と出ている。

 南海電鉄がVISAカードを改札機にタッチして決済できる「VISAタッチ」の実証実験を開始したのは2021年4月のこと。その南海が今年4月から同方式の利用可能駅を18駅から28駅に順次拡大した。子会社の泉北高速鉄道でも使えるようになっている。今回も12月11日までの実証実験という位置づけだが、その後は定着すると見られる。

 さらに5月31日からは福岡市営地下鉄の7駅でもVISAタッチの実証実験がスタートした。7月15日からは西日本鉄道(西鉄)の5駅でも実験開始予定だ。長電バス(長野県)や横浜市営バスなどのバス路線にも広まってきた。

交通系ICカードの課題

 現在、公共交通機関でのキャッシュレス決済は、Suicaなどの交通系ICカードが圧倒的シェアを持つ。新幹線など長距離列車での使用も可能となり、首都圏では鉄道利用者の90%以上が決済に利用していると言われる。買い物などでの利用も当たり前になった。

 ただSuicaが01年に導入されてからすでに20年が過ぎている。システムは安定しているものの最新技術とは言えず、構造的な課題も存在する。

 最大の課題は専用カードを…

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鉄道ライター

1965年、大阪府豊中市生まれ。大阪大学で演劇学を専攻し、劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。出版社勤務を経て97年に独立し、ライターに。2004年頃から鉄道を専門とし、雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事などを担当した。東日本大震災で被災した鉄道路線の取材を精力的に行うほか、現在もさまざまな媒体に寄稿している。主な著書に「ここがすごい!東京メトロ」(交通新聞社)、「きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)など。