経済プレミア・トピックス

「撤退か残留か」ロシア進出の日系企業の悩みとは

川口雅浩・経済プレミア編集部
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ロシアに進出した日系自動車メーカーの組み立て工場で作業する従業員=ウラジオストクで2013年2月25日、大前仁撮影
ロシアに進出した日系自動車メーカーの組み立て工場で作業する従業員=ウラジオストクで2013年2月25日、大前仁撮影

 ロシアに進出している日系企業のうち、現地からの撤退を表明したのは全体のわずか4%にとどまることが、日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査で明らかになった。

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、米マクドナルドや仏ルノーなどがロシア撤退を表明している。これに対して、撤退を表明する日本企業は少ない。取材を進めると、ロシアという特異な市場でビジネスを行う日本企業の複雑な立場が浮かび上がった。

 ジェトロによると、ロシアに進出している日系企業で、「モスクワ・ジャパンクラブ商工部会」と「サンクトペテルブルク日本商工会」に所属する企業は211社ある。多くは自動車メーカーや商社など大企業だ。

 ジェトロはこの211社を対象に5月、四半期に1度の景況感調査を行い、90社から回答を得た。その中で「今後1~2年の事業展開見通し」を尋ねたところ、「ロシア撤退」を表明したのはわずか4%。残る96%の企業は規模を縮小するなどしても撤退せず、残留する意向を示した。

 民間調査会社の帝国データバンクがロシアに進出する日本の上場企業168社を対象に5月に行った調査では、「完全撤退」を表明したのは3社にとどまった。撤退は全体の約2%で、ジェトロの調査と傾向は同じだった。

再参入のハードル高く

 ロシアからの撤退を表明した日系企業が4%と少ない現状について、ジェトロは「外国企業がロシアから撤退した場合、ロシア政府が接収するという法案がロシアの上下院で審議中のため、日系企業は考えあぐねているのではないか」(海外調査部欧州ロシアCIS課)とみている。

 法案が成立すれば、日本企業が撤退した場合、工場の生産設備をロシアや中国など第三国が取得する可能性が高い。仮にウクライナとの問題が終結した…

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川口雅浩

経済プレミア編集部

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。