
ジェトロ・ワルシャワ事務所長に聞く(下)
ロシアとウクライナの戦闘は長期化の様相を示している。ウクライナに進出した日系企業に対し、日本貿易振興機構(ジェトロ)はポーランドの首都ワルシャワから支援してきた。ワルシャワ事務所の石賀康之所長は、戦闘の早期終結を祈りながら、「将来のウクライナ復興はオールジャパンで取り組む必要がある」と語る。
――ロシアのウクライナ侵攻直後、日本たばこ産業(JT)や住友電気工業など多くの日系企業が工場の操業を停止したと聞いています。その後の状況はどうなっているのでしょうか。
◆侵攻直後、多くの日系企業が操業を停止し、駐在員と従業員は家族とともに一時的にポーランドなどに避難しました。この時は着の身着のまま、避難した方が多かったようです。
日系企業は首都のキーウ(キエフ)周辺に多く立地しています。キーウの戦闘が収まり、落ち着きを取り戻してからは、日系企業のウクライナ人の従業員は徐々に自宅や会社に戻り始めています。従業員が戻っている会社は操業を再開しているようです。
――日本人の駐在員もキーウに戻り始めているのでしょうか。
◆避難した駐在員は、いつウクライナに戻れるか関心が高いのですが、ウクライナは外務省が日本人に退避を勧告する「危険情報レベル4」にあります。戻りたくても、慎重に対応せざるを得ません。
事業を継続するためステータス(ウクライナ政府の滞在認可)を更新しなくてはいけない日系企業もあります。ウクライナに入れないまま、事業が継続できなくなることを心配している会社もあります。
ウクライナ政府の日本への期待とは
――これから当面の間、必要なことは何でしょうか。
◆まだ先の話かもしれませんが、いずれ戦闘が終結すれば、ウクライナの復興が…
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川口雅浩
経済プレミア編集部
1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。