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バイデン政権が「粉ミルク空輸作戦」異例対応のワケ

西田進一郎・北米総局長
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粉ミルクがほとんどないバージニア州のドラッグストア 筆者撮影
粉ミルクがほとんどないバージニア州のドラッグストア 筆者撮影

 「オペレーション・フライ・フォーミュラ」。米バイデン政権が国防総省などとともに今年5月中旬から展開している作戦だ。名前を聞いただけでは、ピンとこない人が多いだろう。米国内で不足する粉ミルクを国外から航空機で運ぶ「粉ミルク空輸作戦」のことだ。

大手の自主回収が引き金

 きっかけは、米医薬品大手の「アボット・ラボラトリーズ」が2月、ミシガン州の工場から出荷した粉ミルクを飲んだ乳児4人が細菌の感染症にかかったという申し立てを受け、工場の稼働を停止して商品を自主回収したことだった。

 もともと粉ミルク製造は規制が厳しく、米国の粉ミルクの95%以上は国内で生産されている。大手4社で米市場をほぼ分け合っており、最大手のアボットは4割を占めている。その主要な工場が稼働停止すれば不足分は大きく、他社がすぐに補うことができないという構造的な弱さがあった。

 その上、新型コロナウイルス禍でサプライチェーンの混乱や物流の停滞が続き、一方で2020年に落ち込んだ出生率は21年に回復し、需要は増えていた。これらの要因が重なり、春には小売店からみるみる粉ミルクがなくなっていった。

 筆者も5月下旬、自宅があるバージニア州の複数のドラッグストアを回ってみた。しかし、いずれも粉ミルクの陳列棚に商品はほとんどなかった。インターネッ…

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西田進一郎

北米総局長

1975年生まれ。97年に入社し、岡山、神戸などの支局や東京社会部を経て2005年から12年まで政治部。その後ワシントン特派員や政治部デスク、政治・安全保障担当の論説委員を経て22年4月から現職。