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参院選後の「物価と円安」は?日銀は金融政策どうする

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
月例経済報告等に関する関係閣僚会議を終え、記者団の質問に答える日銀の黒田東彦総裁=首相官邸で2022年6月20日、竹内幹撮影
月例経済報告等に関する関係閣僚会議を終え、記者団の質問に答える日銀の黒田東彦総裁=首相官邸で2022年6月20日、竹内幹撮影

 参議院選挙では自民党が単独改選過半数を得た。争点として物価対策が議論されたが、選挙で勝利した自民党は、低所得の子育て世帯に子供1人当たり5万円を支給する生活支援特別給付金や、賃上げ促進税制などについて説明することが多かったと思う。物価上昇はこれからも継続するので、さらに効果的な対策を打つことが望まれる。

輸入物価の高騰が家計を圧迫

 物価対策とは言っても、生活困窮者への特別給付金などでは、物価上昇そのものを止めることにならない。歯が痛いときに、治療をせずに痛み止めだけを飲んで済ませるのに似ている。もし、現在の物価上昇が一時的なものであれば効果はあるだろう。しかし、物価上昇が継続するのなら、何回も痛み止めを飲み続けなくてはならない。選挙戦では、このような基本的なことも、ほとんど各党の議論にならなかった。

 エコノミストの立場から明らかなのは、輸入物価の高騰が生活者の家計を圧迫していることだ。資源価格の高騰と円安が輸入物価を上げている。

 もし日銀が利上げをすれば、資源価格高騰の分を押し下げるような円高に転換させることはできる。半面、利上げは景気を冷やすので、物価対策を議論するときは、日銀の…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。