
A美さん(50)は化学製品製造会社で営業統括部長をしています。先日、担当地域内の支店の営業部長、次長が10人ほど参加するオンライン会議がありました。その場で、ある支店の次長であるB夫さん(55)の様子がいつもと異なっているのに気づきました。
会議の冒頭、A美さんが新商品の販売戦略を説明している時、B夫さんがなぜかニコニコしている姿が気になりました。その後、各支店の報告がありました。報告中、参加者の誰かが相づちを打ったり、「それはそうじゃないだろう」などと話している声が耳に入りました。
A美さんがオンラインの設定を確認すると、リモートで自宅から参加しているB夫さんのミュートが外れていることがわかりました。A美さんは全員あてのメッセージで「発言者以外はミュートにしてください」と注意した上で、B夫さんをミュートにしました。
ところが、ミュートを外してしまうのか、B夫さんのつぶやきが、また聞こえてきます。つぶやきの内容は誰かに向けた発言というよりも思いついたことを口にしており、テレビを1人で見ながら突っ込みを入れているような状態でした。
家庭内で問題抱えて深酒
A美さんは「B夫さんの様子がおかしい」と感じました。B夫さんはこれまで存在感が薄く、地味で控えめな印象でした。会議終了後、B夫さんの上司に連絡し、B夫さんの様子を自宅まで見に行くように指示しました。
その後、B夫さんの上司から連絡がありました。「B夫さんは数週間前から家庭内で問題を抱えているそうです。最近は深酒をすることが多く、昨晩もかなり飲んだようです。会議前にも飲酒していたのか、酒のにおいがしました」と言います。
A美さんの発言の際にB夫さんがニコニコしていたり…
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特定社会保険労務士
大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/