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FRB利上げ「日米の景気後退リスク」は一層高まった

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
米上院の銀行住宅都市委員会で発言するFRBのパウエル議長=2022年6月22日、AP
米上院の銀行住宅都市委員会で発言するFRBのパウエル議長=2022年6月22日、AP

 米連邦準備制度理事会(FRB)は7月27日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(短期金利)を0.75%引き上げて、金利水準のレンジを2.25~2.50%とした。今年4回目の利上げとなる。米国の景気後退リスクは一段と高まり、日本経済もそれに引きずられて、景気後退に陥る可能性がある。

あったはずの需要が消える

 世界的な景気悪化は、FRBの利上げによるものだとする見方がある。しかし、原因はそれだけではなく、国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)の見方にもあるように、世界経済は2021年央から悪化傾向にある。ITなどの生産活動は循環的な動きとしてのピークアウトに達し、徐々に在庫が積み上がる変化が見られる。

 IT分野では、21年から現在に至るまで半導体不足に悩まされてきた。今でも私たちが家電製品を買おうとすると、店頭に在庫がなくて入荷待ちとなることが少なくない。在庫不足だから、需要は旺盛なはずだと思ってしまう。しかし、景気循環には不思議な側面があり、いったんそれが起きると、今まで存在した需要があっという間に消え、入荷待ちの行列もなくなってしまうことがある。

 米国の利上げは、世界中に存在したはずの需要を消滅させ、経済活動を停滞させてしまうことが怖い。すでに、米利上げはボディーブローのように世界経済の体力を奪っている。

 つい1カ月ほど前まで、インフレ傾向が当たり前と見て…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。