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コロナ拡大でも意外に少ない「夏休み旅行キャンセル」

鳥海高太朗・航空・旅行アナリスト
昨年夏は感染の拡大で、お盆休み中も例年より利用客が少なかった=JR東京駅の東海道新幹線ホームで2021年8月7日、前田梨里子撮影
昨年夏は感染の拡大で、お盆休み中も例年より利用客が少なかった=JR東京駅の東海道新幹線ホームで2021年8月7日、前田梨里子撮影

 新型コロナウイルス感染拡大の第7波により、7月28日には東京都の1日の新規感染者数が初めて4万人を超えた。しかしこれまでのところ、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などは出されず、「行動制限」はない状態になっている。

 夏休みの旅行に関しては、一部でキャンセルは出ているものの、全体としてキャンセルは限定的だ。旅行会社や宿泊施設などに話を聞くと、現在でもキャンセルより新規予約の方が上回っている。これまでの感染拡大時には見られなかった傾向だ。

行動制限なくキャンセル料は通常通り

 予約済みの旅行のキャンセルが予想以上に少ない理由の一つに、キャンセル料の支払いがある。

 過去に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出された際は、航空、鉄道、旅行各社はキャンセル料なしでキャンセル可能にする措置を取った。宿泊施設も、多くの場合、宿に直接電話することでキャンセル料なしの取り消しに応じた。結果として、旅行に不安を持つ人のキャンセルが相次いだ。

 飲食業は、時短要請やお酒の提供を見合わせるなどの措置に従うと補償金が支払われた。だが旅行業は、キャンセルに対する国の補償はGo Toトラベルが一時停止された時のみで、基本的には航空、鉄道、旅行各社や宿泊施設がキャンセル料を被る形になった。

 しかし、今回は異なる。国が「行動制限」をしないことで、仮に旅行を取りやめたとしても、あくまで「自己都合」によるキャンセルと…

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航空・旅行アナリスト

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科修士課程修了。食品会社、城西国際大学観光学部助手を経て、帝京大学、共栄大学、川村学園女子大学で非常勤講師。専門は航空会社のマーケティング戦略。テレビやラジオの情報番組に多数出演し航空会社や旅行の解説を行う。近著に「コロナ後のエアライン」。