近藤伸二のアジア新潮流

ペロシ氏訪問で緊張激化「台湾半導体」戦略に影?

近藤伸二・ジャーナリスト
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来日し、記者会見するペロシ米下院議長=東京都港区の米国大使館で2022年8月5日午前11時14分、宮間俊樹撮影
来日し、記者会見するペロシ米下院議長=東京都港区の米国大使館で2022年8月5日午前11時14分、宮間俊樹撮影

 ペロシ米下院議長の台湾訪問で米中対立が一段と激化している。半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、米政府からの巨額補助金を見込む半面、中国への投資を制限される事態にも直面しそうだ。米中の2大国家を利用して発展してきた“半導体の巨人”はジレンマに陥っている。

 中国はペロシ氏訪問に激しく反発し、台湾の周囲で異例の実弾演習を実施した。ペロシ氏は台湾から韓国を経て来日した。東京都内で5日に行った記者会見で「台湾は世界で最も自由な国の一つだが、努力して発展させた。経済は繁栄し、半導体産業で成功している」と台湾の半導体産業の重要性を改めて指摘した。

 ペロシ氏が議長を務める米下院は、訪台直前の7月28日に、半導体の生産や研究開発に527億ドル(約7兆円)の補助金を投入すると定めた法案を可決した。TSMCのほか、米国内で工場を建設する米インテルや韓国サムスン電子に支給される見通しだ。

アリゾナ工場に巨額補助金

 TSMCは2020年5月に米アリゾナ州での工場建設を発表した。そのときの声明文には、工場建設が「米政府とアリゾナ州が支援するという理解と約束」に基づくと記されている。米政府の補助金が条件であることを明確にしたわけだ。

 米国で半導体を製造するコストは、台湾や韓国より3割以上高いと言われる。TSMCは米国進出に乗り気ではなかった。だが、米政府の強い働き掛けで応じた経緯がある。

 工場建設の事業費は120億ドル(約1兆6000億円)。TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏らは米国のコスト高や製造業の人材不足などを指摘し、揺さぶりをかけた。現時点で補助金の額は明らかではないが、かなりの額が見込まれる。

最先端品は台湾で

 アリゾナ工場では、最先端である回路線幅5ナノメートル(ナノは10億分の1)の半導体を生産する。ただし、TSMCは台湾の工場で次世代の3ナノ品の量産を年内には開始する予定だ。その次の2ナノ品の工場も年内に台湾で着工する。アリゾナ工場が稼働する24年には、5ナノ品は最先端ではなくなっている。

 日本政府も6月、TSMCがソニーグループ、デンソーとともに建設する熊本工場に補助金4760億円の拠出を決めた。総投資額約1兆1000億円の半分近い。その工場…

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近藤伸二

ジャーナリスト

 1956年神戸市生まれ。79年毎日新聞社入社。香港支局長、台北支局長、大阪経済部長、論説副委員長などを歴任。2014年追手門学院大学教授。22年3月に退職し、その後、ジャーナリストとして活動。著書に「彭明敏 蔣介石と闘った台湾人」「アジア実力派企業のカリスマ創業者」など。