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KDDI通信障害で注目「ローミング」の思わぬ課題

石野純也・ケータイジャーナリスト
金子恭之総務相(左)はローミングの検討会を9月に設置(通信障害を起こしたKDDIの高橋誠社長=右=に行政指導の文書を手渡す)=東京都千代田区で2022年8月3日、加藤美穂子撮影
金子恭之総務相(左)はローミングの検討会を9月に設置(通信障害を起こしたKDDIの高橋誠社長=右=に行政指導の文書を手渡す)=東京都千代田区で2022年8月3日、加藤美穂子撮影

 7月2日に発生したKDDIの大規模通信障害で、改めて注目を集めているのが、緊急時に他の事業者の電波を使って通信を行う「ローミング」だ。

東日本大震災後も議論したが

 2011年に発生した東日本大震災後にもローミングの検討が進められた。ただ、当時使っていた3Gの通信は、NTTドコモとソフトバンクの電波とKDDIとでは通信方式が異なっていたこともあり、議論が棚上げになってしまっていた。今回、KDDIの通信障害時に警察や消防へ緊急通報ができなかったため、再びスポットライトが当たった格好だ。

 8月3日には金子恭之総務相が、9月に検討会を設置して年内にも方針を示すと表明した。4G以降は通信方式の違いはない。実現すれば、通信障害時はもちろん災害時にも、ローミングによって契約以外の事業者に接続することで最低限の通信ができるようになる。

 ローミングには、一般的なサービスとして国際ローミングがある。日本の通信事業者が発行したSIMカードの認証情報で、海外渡航時にも現地の通信事業者に接続できるサービスを言う。また国内では、新規参入の楽天モバイルが、基地局が少ない場所でKDDIの電波を借りて通信を行っているが、これもローミングだ。

障害の内容によっては不可能

 ただ通信各社とも、自社の利用者数を基に設備を設計しているため、通信障害時に1社分の利用者すべてを他社が補えるかは検討すべき課題だ。

 想定を超え…

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ケータイジャーナリスト

1978年、静岡県生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。2001年、宝島社に入社。当時急速に利用者数を伸ばしていた携帯電話関連のムック編集に携わる。05年には独立してフリーランスのジャーナリスト/ライターに転身。通信事業者、携帯電話メーカー、コンテンツプロバイダーなどを取材、幅広い媒体に原稿を執筆する。業界動向を記したビジネス書から、端末の解説書まで著書も多い。