地域で光る小さな会社

木更津の料理人が農家や猟師とつくる「街再生の好循環」

櫻田弘文・クエストリー代表取締役
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「ごはんクリエイト」代表の野口利一さん
「ごはんクリエイト」代表の野口利一さん

 千葉県中西部に位置する木更津市は、東京湾に面した人口約13万5000人の街だ。古くから港町として栄え、1997年には対岸の川崎市と結ぶ東京湾アクアラインが開通。潮干狩りやゴルフなどを楽しみに訪れる観光客も多くなっている。ここ10年ではアクアラインの出入り口に三井アウトレットパーク、湾岸の埋め立て地にはイオンモールがオープンし、郊外の幹線道路沿いにもドン・キホーテなどの量販店が点在する。

 だがこの地はもともとJR木更津駅を中心とした商業の街でもあった。それがバブル崩壊後、一気に廃れていく。駅周辺の中心街にあったそごうや西友といった百貨店・スーパーは軒並み閉店し、駅西口の富士見通り商店街もシャッター街となって久しい。休日の昼間でも人通りは少なく、閑散としている。

 この状況に危機感を抱いているのが、市内で飲食店3店舗を経営する「ごはんクリエイト」代表の野口利一さん(40)だ。今回は食を通して地域の課題を解決し、街に再び明かりをともそうと奮闘する野口さんの取り組みに迫る。

地域の「食」の舵取りをしたい

 今年3月、木更津駅から徒歩15分、東京湾を臨む鳥居崎海浜公園が「食の拠点」として生まれ変わった。木更津市が市営プールの跡地につくったもので、2階建ての施設に3事業者が入居した。そのうちの一つが、野口さんが営むレストラン「舵輪(だりん)」だ。「地域の食の舵(かじ)取りをしたい」という思いから、船の操縦ハンドルの「舵輪」を店名にした。

 舵輪のランチメニューには、千葉県産のブランド豚やブランド牛を使った肉料理や、九十九里産のハマグリを使った魚介料理などが並ぶ。木更津産のイチゴと老舗酒蔵の酒かすを使ったスムージーなどデザートも人気だ。

 野口さんは自身も料理人であり、これまでも木更津をはじめ房総半島の地域食材を主役にした料理を提供してきた。

持続可能な「食の循環」目指す

 野口さんが生産者から食材を直接仕入れる中で見えてきた地域の課題が二つある。

 一つは農家の後継者不足だ。多くの農家は子どもに後を継がせたくないと考えている。気象に左右され、苦労が多い割にもうからないからだ。また、農業高…

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櫻田弘文

クエストリー代表取締役

1955年山梨県生まれ。日本大学卒業後、78年に販売促進の企画・制作会社に入社。2001年、クエストリーを設立して独立。中小企業経営者向けの「クエストリー・ブランディングクラブ」を主宰する他、数多くの専門店や飲食店のブランディングを実践的に指導している。