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コロナ「感染拡大第7波」が投げかけた日本経済の課題

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
新型コロナウイルス感染拡大を受けJR品川駅に設置された無料の臨時検査場=2022年8月5日、幾島健太郎撮影
新型コロナウイルス感染拡大を受けJR品川駅に設置された無料の臨時検査場=2022年8月5日、幾島健太郎撮影

 7月に入ったころから、新型コロナウイルスの感染拡大第7波が襲ってきた。第7波の新規感染者数の山は、第6波のピークを上回っている。感染者の中には3回目のワクチンを打った人や、以前に感染した人も多く含まれている。

 ワクチンを打ったから、もしくはすでに感染したから大丈夫などとはとても言えない。第7波は、国民の大多数がワクチンを打っていれば、集団免疫ができて感染が収束するという期待を打ち砕いた。

本当の「ウィズ・コロナ」とは

 今はコロナ禍で苦しんでいても、いずれは通り過ぎ、「アフター・コロナ」の平和な世界が来るという認識が少し前まであった。しかし、コロナが完全に消えてなくなる世界は、当分来ないだろう。インフルエンザの流行のように毎年新しい変異株が出現し、それを前提にして社会活動を動かすような体制が必要になる。それが今後の「ウィズ・コロナ」の世界観ではないか。

 そこで必要なことは、いくつかある。その代表は、医療体制をもっと大胆に拡充することだ。迅速な医療アクセスを確保するために、感染者を振り分けるルールづくりも整備しなくてはならない。

 現在、コロナの区分を感染症法の2類相当から5類相当に変更して、全数把握の責任から医療を解放すべきだという意見が強い。半面、5類相当になると検査・治療の公費負担が全額ではなくなってしまう。2類でも5類でも既存の区分では不都合が残る状況だ。

 この議論の中で、何よりも医療体制を理由に挙げている点は、いまだに天動説を唱える人のように感じられて、筆者は違和感を覚える。2年半前にコロナ禍が始まったころから、医療のキャパシティーを拡充すべきだと主張してきた。政府は果…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。