
A男さん(52)は地方都市でスーパーマーケットを数店舗経営しています。従業員数は正社員、契約社員、パート社員を合わせて300人ほどです。2022年10月1日から、従業員101人以上の企業は、パートなど短時間労働者も社会保険加入の対象となります。ところが10月が近づくにつれ、パート社員から退職の申し出が相次ぎ、困っています。
春以降、A男さんはパート社員に社会保険適用拡大の説明を行ってきました。現在、パート社員のうち、週20時間以上勤務の場合は雇用保険のみ加入し、週30時間以上勤務の場合は、雇用保険と社会保険に加入しています。同社のパート社員で最も多いのは、週20時間以上30時間未満で、雇用保険のみ加入して働く人たちです。
新たに社会保険の加入が義務付けられる従業員は(1)週の所定労働時間数が20時間以上(これまでは週30時間以上)(2)月額賃金が8万8000円以上(3)2カ月を超える雇用見込みがある(4)学生ではない――のすべての要件を満たす者となります。(2)と(4)は今回加わった条件です。
雇用保険のみに加入して働く人たちに、10月1日以降は社会保険も適用になる可能性があると伝えると、「配偶者の扶養に入っているので社会保険には加入したくない」「手取りが減るのは困る」という声が多くあがりました。
「配偶者の扶養から外れたくない」
A男さんは「社会保険に加入したくないのであれば、勤務時間数を週20時間未満に減らしてもらうしかない」「手取りが減らないよう勤務時間数を増やすことや、契約社員への転換制度を利用してもらうことは可能だ」と伝えました。
その上で、10月1日以降の働き方として(1)週20時間…
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特定社会保険労務士
大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/