
ある著名な経済学者はかつて、「インフレが起きると、買い急ぎが消費支出をより増やすだろう」と話していた。昔の話だが、筆者は直感的に間違っていると思っていた。
最近になり、日本でもインフレが起きたことで、この説が本当かどうかをデータで確かめることができた。実際には、インフレが加速した4月以降の消費性向は依然として低く、貯蓄率は高かった。
防衛手段は貯蓄を増やすこと
少し考えればわかることだが、現在のインフレは主に食料品とエネルギー価格の上昇で起きている。食料品の値段が上がるから買いだめをするとしても限界がある。エネルギーに関しても、ガソリンや灯油の買いだめもやはり無理があるし、電気代やガス代については不可能だ。
人々にできることは、将来の生活コスト増加分を今のうちに貯蓄しておくことだ。つまり、消費支出は増えるのではなく逆に減っていき、貯蓄が増えるのだ。インフレになると貯蓄の価値は目減りしてしまう。それは困るが、それでも減っていくペース以上にためるしかないということなのだろう。
インフレの目減り分は、本来は預金金利でカバーできるという考え方もできる。しかし、日本の預金金利は低い。1970年代の石油危機の時ほどの高い金利は付かない。だから、インフレに対して価値を守る力が低い。
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