
原発方針転換・飯田哲也さんに聞く(上)
「原発の新増設はうまくいかないと思います。脱炭素の政府目標を達成するには、風力、太陽光発電と蓄電池をセットで普及させるのが一番の近道です」。原発やエネルギー政策に詳しい環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長はこう語る。岸田文雄首相が次世代原発の建設などを検討するよう関係省庁に指示し、波紋を広げている。長年、原子力産業を見てきた飯田さんに岸田発言について聞いた。
――岸田首相はこれまで「原発の新増設とリプレース(建て替え)は想定していない」と表明していましたが、検討を指示しました。どう受け止めますか。
◆岸田さんは(経済産業省の官僚に)言わされているのでしょう。昨年から天然ガスが高騰したところに、ロシアのウクライナ侵攻や円安で燃料の輸入コストが上がっています。さらに国内では一時、電力が足りないという話が出ました。
「エネルギー危機」のような雰囲気の中で、原発を推進するしかないという機運を作りたいのでしょう。原発の再稼働だけでなく、原則40年間の運転期間の延長と新増設まで検討を指示したのには驚きました。
不十分な安全規制と避難計画、行き場のない核のごみ、核燃料サイクルの破綻など問題山積なのに、あまりにも唐突で、ドサクサまぎれ、火事場泥棒的な感じがします。重要な政策転換となるだけに国民的な議論が必要です。
原発より太陽光の発電コスト安く
――経産省が2021年8月に示した30年の発電コストの試算では、最安といわれた原発より太陽光発電が安くなっています。原発の建設コストも原発事故前に1基4000億円だったのが、規制の強化で1基1兆円といわれています。世界的に再生可能エネルギーのコストが下がる中、原発の新増設はあり得るのでしょうか。
◆新増設などうまくいかないと思います。この10年間で…
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