
原発方針転換・飯田哲也さんに聞く(下)
「原発の再稼働と運転期間の延長は事故のリスクを高めます。その必要があるのか厳しく問う必要があります」。岸田文雄首相が原発政策の見直しを指示したことについて、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長はこう語る。首相が検討を指示した次世代革新炉の実現性はどうなのか、原子力産業に詳しい飯田さんに聞いた。
――岸田首相は現在の原発を改良した革新軽水炉や小型モジュール炉(SMR)、高速炉や核融合炉などを次世代革新炉と称して検討を指示しました。実現の可能性はあるのでしょうか。
◆技術が確立している既存の大型原発でさえ、英国、フランス、フィンランドなどでは予想を超える高コストとなり、建設の遅延が続いています。フランス最大の電力会社で原発を担う「フランス電力(EDF)」は巨額の債務を抱え、仏政府が国有化することになりました。
フランスは「原発大国」と言われますが、老朽化している原発の維持やマクロン政権が目指す次世代原発の新設には多額の資金が必要です。もうかると思っていた原発が実は巨額の損失を生むのです。
ビル・ゲイツ氏が力を入れるSMRはそれ以上の高コストが予想されます。炉型も多種多様で、ほとんど需要がないため、期待する量産効果は望めないでしょう。核のごみやメルトダウンなど原発固有のリスクも同じです。
高速炉で長寿命の核分裂生成物を消滅させる構想など、何十年も前からありますが、非現実的で、およそ実現しえない技術です。高速炉は開発や発電のコストが高く、多くの先進国が計画を断念しました。今さら革新炉などと言われても、根拠のない夢物語ばかりです。
再稼働と運転期間の延長は
――既存原発の再稼働と運転期間の延長についてはいかがでしょうか。
◆原発の再稼働と運…
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