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退職しかない?54歳社員「母の介護」でとるべき選択肢

井寄奈美・特定社会保険労務士
 
 

 A郎さん(48)は従業員40人ほどの運送会社を経営しています。運転手として勤務するB夫さん(54)から、会社を退職すべきかどうか悩んでいるという相談を受けました。B夫さんは20年以上勤務し、勤務態度も真面目です。A郎さんにとって頼りになる存在で、急な退職の申し出に驚きました。

 理由を聞くと、B夫さんには認知症をわずらっている母親(82)がいるそうです。これまで母親の面倒をみていた姉が入院することになり、B夫さん以外に面倒をみる人がいなくなったということでした。B夫さんは妻に先立たれており、子どもはいません。

 B夫さんは会社にとって必要な人材です。A郎さんはB夫さんに退職を思いとどまってほしいと考えました。ひとまず、B夫さんが介護をしながら、仕事を続ける方法がないか、一緒に考えてみようと伝えました。

介護休業制度とは

 常時介護を必要とする家族を抱える労働者は、育児・介護休業法に基づく「介護休業制度」を利用することができます。この場合の「常時介護を必要とする」状態とは、「介護保険制度の要介護2以上」が目安です。要介護認定を受けていなくとも、2週間以上、常時介護が必要な場合は対象となります。

 対象となる家族は、事実婚を含む配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹や孫で、同居や扶養の要件はありません。労働者本人以外に介護ができる家族が他にいる場合も制度の利用は可能です。

 介護休業制度には、最大93日まで会社を休んで家族を介護できる「介護休業」があります。3回に分割して取得できます。単発で休む制度としては年5日まで1時間単位で取得できる「介護休暇」があります。このほか、介護のために働く…

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特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/