
ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、「女性兵士」がメディアでしばしば取りあげられている。ウクライナ外務省のツイッターやインスタグラムには、笑顔を見せたり銃を構えたりする女性兵士の写真が掲載された。究極の男性中心組織である軍で女性が増えて活躍することは、男女平等の証しなのか。こんな疑問が改めて浮かんだ。
侵攻から間もない3月6日、毎日新聞デジタルは「女性兵士の投稿、世界に拡散 軍隊への参加進むウクライナ」との記事を配信した。記事によると、女性兵士の数は全体の15%、3万人以上という。ネット交流サービス(SNS)の女性兵士動画や写真には「心を打つ」などの声が相次いだ。一方、女性兵士を総力戦のイメージ戦略に使うウクライナ国防省のやり方には批判が出たという。
同じ毎日新聞デジタルの8月27日の記事は「頭や足のない遺体を撮影…35歳女性兵士が子と離れても戦場に立つ理由」。義勇兵組織所属の女性兵士は、ウクライナ北東部で亡くなった兵士の身元を確認し、遺族に送り届ける任務につく。家族と離れ胸が張り裂けそうだ。でも、国を守る任務は男女に開かれていることが大事と考え、「若い女性たちに、前線で活躍する姿を見せたい」と語る。
ウクライナ専門家の見方
朝日新聞デジタルは、ウクライナのジェンダー問題専門誌のタマラ・ズロビナ編集長に聞いた(7月14日配信)。2014年のロシアによるクリミア強制編入を契機に、女性たちが声をあげ、戦闘に就ける女性の範囲が拡大。大統領の署名で、女性に平等な権利と機会を与える原則が確立されたという。
「戦争で家父長制が強まると言われている。しかし、戦後のウクライナではジェンダー平等はさらに発展していると思う」とズロビナ氏は予測している。
そうなればよいと願う。と同時に、女性兵士はジェンダー平等の象徴なのか、それとも「平等」を御旗に、軍の目的遂行に利用されているのか複雑な心境に陥った。
自衛隊「女性登用の歴史」
解きほぐす助けになる本が7月、出版された。一橋大大学院社会学研究科教授の佐藤文香氏が著した「女性兵士という難問 ジェンダーから問う戦争・軍隊の社会学」(慶応義…
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