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乗ってみた「西九州新幹線」武雄温泉駅で感じた不可解

土屋武之・鉄道ライター
西九州新幹線「かもめ」1号=長崎市で2022年9月23日午前7時29分、徳野仁子撮影
西九州新幹線「かもめ」1号=長崎市で2022年9月23日午前7時29分、徳野仁子撮影

 西九州新幹線が9月23日に一部開業し、武雄温泉(佐賀県)―長崎間で運転が始まった。列車愛称は「かもめ」。今のところ路線の実延長は66キロしかなく、途中の諫早駅(長崎県)にのみ停車する最速列車に乗れば、片道わずか23分で行き来できてしまう。

 “日本一短い新幹線”などと話題になっているが、背後にはさまざまな問題も横たわる。ひとつは一部区間のみの開業となったことで、利用客の利便性が低下している面もあることだ。

しわ寄せは利用客に

 西九州新幹線の本来の整備予定区間は、九州新幹線(博多―鹿児島中央)の新鳥栖駅(佐賀県)で分岐し、佐賀県内を通って長崎駅へ至るというものだ。だが国と佐賀県の協議が財政負担などをめぐって現在もまとまっておらず、新鳥栖―武雄温泉間は着工すらしていない。

 国は基本的に全区間の整備を九州新幹線と同じ「フル規格」で進める立場だ。これに対し佐賀県は、負担額の割に時間短縮効果が薄いなどとして、新幹線は建設せず、在来線と新幹線で直通運転ができる「フリーゲージトレイン」(軌間可変電車)の導入を求めている。だがフリーゲージトレインは技術的な課題が解決できておらず、国内では実用化に至っていない。国、JR九州とも導入は現実的ではないとの考えだ。

 協議がまとまらないことで、しわ寄せが来ているのは利用客だ。当面の間、高速列車で博多駅から長崎駅へ行きたい場合は、在来線特…

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鉄道ライター

1965年、大阪府豊中市生まれ。大阪大学で演劇学を専攻し、劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。出版社勤務を経て97年に独立し、ライターに。2004年頃から鉄道を専門とし、雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事などを担当した。東日本大震災で被災した鉄道路線の取材を精力的に行うほか、現在もさまざまな媒体に寄稿している。主な著書に「ここがすごい!東京メトロ」(交通新聞社)、「きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)など。