
旅行が趣味のAさん夫妻。先日、Aさんが75歳になったのを機に、夫婦で遺言書を作成することにした。
お互いに、自分が亡くなったら配偶者にすべて相続させる。もし旅行中に不慮の事故で2人が同時に亡くなった場合は、子供たち2人に平等に相続させるという簡単な内容にした。最悪の事態を想定して遺言書を作成しておけば、それがお守り代わりになって、その事態を免れることができると信じたい気持ちもあった。
実は、旅先の事故などで夫婦が死亡した場合、その死亡時刻の違いによって、相続のやり方や相続税が変わることがある。そこで、夫婦が同時に死亡した場合と、そうでない場合でどのように変わるのか、その知識を整理してみよう。
死亡時刻に差があると…
夫婦の死亡時刻に差がある場合、先に亡くなったのが夫だとすると、夫の財産は、遺言書に従って妻がすべて相続し、その後亡くなった妻の財産を2人の子供が相続することになる。
死亡した時刻の先後が不明の場合には、同時死亡と推定されて相互に相続権はないものとされる。従って、夫の財産は直接子供2人へ、妻の財産も直接子供2人が相続することになる。
では、持っている財産を夫100、妻100として考えてみよう。例えば交通事故などで、夫が先に死亡し、その後に妻が死亡したとする。
死亡時刻に差があるので、妻が夫の財産を100相続して200の財産となり、妻の200の財産を子供たち2人が相続することになる。この差は、たとえ数時間であっても、いったんは妻が相続したものとみなされる。
妻に課税される夫の100に対する相続税については、ただちに子供たちが相続するので「相次(そうじ)相続控除の規定」(10年内に同一財産に課税される相続税は控除)によって控除されるが、それでも子供たちが相続する200の財産については、累進税率の適用で相続税額が大きくなる。
もし同時死亡であれば、子供たち2人が、父…
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